ベッドを備えた飲食店…だと?怪しいぞ
ベッドを備えた飲食店…だと?怪しいぞ

家族で共有しているネットサービスのアカウントは、便利ではありますが、思わぬ形でプライベートが可視化されることがあります。旅行サイトや飲食店予約サービスなどは、アカウント連携によって履歴が自動的に同期されるようになり、家族の誰かが利用した情報が予期せず共有される場面もあります。本人にとっては何気ない操作でも、家族にとっては意外な発見につながることがあります。東京都在住・Mさん(30代)は、まさにデジタル時代ならではの予期せぬ暴露だったのです。

■旅行の下調べのはずが、見知らぬ予約履歴

冬休みの家族旅行の計画中に、その事実は明るみに出ました。大手旅行サイトで宿泊先を探していたMさんは、過去の予約履歴の一覧に目を向けた際、見慣れない店舗名が並んでいることに気づきました。しかも分類には「ベッド個室」とあります。宿泊施設ならともかく、なぜ都内の飲食店名が表示されるのか。ましてや飲食店の「ベッド」というワードに違和感を覚え、さらに調べてみることにしました。

店舗名を検索すると、そこは一般のレストランやカラオケのような外観でありながら、完全個室にベッドを備えた業態だと分かりました。食事ができるだけでなく、横になって過ごせる空間が提供されている店で、最近人気の個室空間であると説明されていました。しかし、Mさんはそんな店を予約したことも、利用した記憶も、その店があるエリアを訪れたことすらありませんでした。

■夫の「帰りが遅くなる」と重なる利用日

気になって履歴をさかのぼると、同じ店だけでなく、別のエリアでも「ベッド個室」と見られる店舗の予約も複数見つかりました。どれもMさんには心当たりがありません。そして、記載されている予約日を確認すると、夫が「接待で帰りが遅くなる」と言っていた日のものばかりでした。

複数回、異なる店舗、同じ時間帯。偶然とは思えませんでした。胸騒ぎを抑えられなくなったMさんは、後日夫に直接確認しました。最初はとぼけていた夫も、やがて観念したように事実を認めました。店には1人で行っていたわけではなく、ラウンジで知り合った女性と利用していたというのです。

■アカウント連携で浮かび上がった意図しない証拠

ではなぜ、飲食店の予約が旅行予約サイトに表示されたのでしょうか。理由は、サービス間のアカウント連携でした。夫は飲食店予約サイトの自身のアカウントで予約をしていたので、従来であれば旅行予約サイトには反映されなかったはずです。しかし最近、旅行予約と飲食予約が提携されるようになり、同一メールアドレスのアカウントが自動でひも付けされ、履歴が同期されてしまっていたのです。

夫自身もその仕様を理解していなかったようで、Mさんが閲覧する旅行サイトの画面に、お気に入り登録している店や、予約履歴が表示されるなど想定していなかったと思われます。システム側の便利な機能が、当人にとっては意図しない「証拠の暴露」となってしまいました。

■「ベッド個室」という衝撃の空間

Mさんにとって衝撃だったのは、浮気の疑いそのものだけでなく、「ベッド個室」という聞き慣れない空間の存在でした。飲食しながら横になれる部屋は、一般的なレストランの個室利用の延長とは言えず、用途を連想すれば不快感を覚えるのも自然です。店によっては照明や音響にこだわり、2人の時間を演出するような構造になっているケースもあるとされており、Mさんは「気持ち悪い」という率直な感情を抱くほどの衝撃を受けたといいます。

自分の日常とは無縁の世界だったはずの空間が、夫の行動を通して急に現実味を帯びたことで、強い違和感と怒りが湧き上がったことは想像に難くありません。

■謝罪と誓い、そして残る不信感

夫は、Mさんの実家の家業を継いだ経営者で、時間に都合がつきやすい仕事でした。問い詰められた夫は、最後には土下座をして謝罪しました。「二度とこうした遊びはしません」と誓いましたが、一度揺らいだ信頼がすぐに戻るわけではありません。Mさんは引退した両親に夫の事態を報告し、冷静に事実を受け止めつつ、今後の夫の行動によって信頼を取り戻せるかどうかを両親に相談しつつ見極めていく必要があると感じたといいます。

便利さを追求したデジタルサービスが、まったく別の側面で家庭内の真実を映し出してしまう可能性を示しています。アカウント連携という一見便利な機能が、家族にとっては予期せぬ発見の引き金になることもあります。Mさんの体験は、デジタル時代ならではの可視化がもたらした象徴的な出来事と言えるかもしれません。

(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)