近年、「十分な資産を築き、若いうちに早期リタイアする生き方」を指す言葉として定着した「FIRE」。多くの人が1度は憧れるこの生き方を、闇の部分までリアルに描いた漫画『1億円を貯めてFIREを目指した男の人生』(作・ホンダアオイさん)がSNSで注目を集めています。
同作は、主人公の有川ヨシオが、21歳から51歳までの30年間、FIREという目標に人生を捧げた軌跡が描かれています。21歳のヨシオは、同期の桐山トオルと親しくなります。ヨシオは早くから資産運用の重要性を説きますが、トオルは深く関心を示さず、飲み会や遊びを楽しむタイプでした。
株式投資を始めた22歳のヨシオは、周囲が旅行や外食にお金を使う中、それらの誘いを断り、徹底した節約生活を続けます。資産は順調に増え、やがてそのこと自体が生きがいになっていくのでした。その後、26歳でトオルの結婚費用が700万円かかったと聞いても、「そのお金を投資に回せばいいのに」と考えます。
30歳手前に入ると、同期たちは結婚、出産、転職とそれぞれの人生を歩み始めます。しかしヨシオの関心はひたすら資産額でした。資産3,000万円に到達した32歳には、毎日数字を眺めることが楽しみになり、周囲よりも優位に立っている感覚を覚えるようになります。
そして33歳のとある日、ヨシオはトオルからのマイホーム購入相談を巡り、口論になるのでした。これがきっかけとなり、入社以来ずっと仲が良かった2人の関係は疎遠になってしまいます。
36歳で資産は5,000万円に達しますが、仕事への意欲を失ったヨシオは窓際社員となり、40歳で雑用業務をこなしている総務部へ異動します。その後も資産金額に注目する日々を過ごすヨシオは、ついに資産総額が目標としていた1億円に到達するのでした。
しかしその頃から、ヨシオはFIRE後の生活について考え始めます。調べるほどに「FIRE後に鬱になった人」の存在を知り、仕事を辞めることができずにいたのです。
そんな中、部長に昇進したトオルと44歳で再会します。トオルは資産が少なくても充実した表情を見せており、それを見たヨシオは「自由があるはずの自分より、なぜあいつの方がイキイキしてるように見えるのか」と疑問を抱くのでした。
その後、疑似的に退職後の生活を体験するために、45歳のヨシオは1年間の休職をしてみます。そこでヨシオが感じたのは平日に会える友人がいない事や「誰からも必要とされない辛さ」からくる孤独感でした。この孤独感を払拭するために、ヨシオは予定よりも早く休職を切り上げ、現実逃避のために仕事に没頭します。
仕事に没頭するヨシオは会社から認められ、出世しはじめます。後輩たちからも慕われ、ヨシオは少しずつ心の余裕を取り戻していくのでした。
同作について、作者のホンダアオイさんに話を聞きました。
■できればお金も経験も若い人には両取りしてほしい
-同作を描こうと思われたきっかけを教えてください。
私も主人公と同じように若い頃に過度な節約や投資をしていました。おかげで資産はかなり増えましたが、私に残ったものはお金だけでした。若い時に仲間たちと色々な経験をしても良かったのではと思うこともあります。
FIREを目指すのは素晴らしいことですが、FIREを目指す上で時間が過ぎていくことも忘れてはいけません。できればお金も経験も若い人には両取りしてほしいと思い、この漫画を描きました。
ー最も読者に伝えたかったことは何でしょうか。
FIREは人生のゴールではなく、道の途中であることは伝えたいです。
お金を貯めるのは数字が増えて楽しい側面もありますが、貯めることに気を取られて「年老いてからお金はあるけど使い道が分からない。もっと若い時に使っておけば良かった」とはなってほしくないです。この作品がお金の使い方、貯め方、FIREを目指す必要性について考えるきっかけになると嬉しいです。
-読者からはどのような反響が届いていますか。
「極端な節約と投資は最も資産増加に効果的ではあるものの、漫画に書いてある通り無形の何か(若い頃の経験など)を失っている側面もありますね」や「社会人になりたての人は是非読んでほしい。受験も大事だが社会人になってどう生きるかの参考になります!」など多くのコメントをいただいています。みなさん読んでいただきありがとうございます
(海川 まこと/漫画収集家)























