「今休んでるのは、甘えとかじゃなくて更年期でしんどいの...」
何度も説明しても、夫は首をかしげて、理解のない言葉を投げかけるだけの日々。そう語るのは、48歳女性の浜谷かおりさん(仮名)です。
かおりさんの更年期障害が本格化し始めたのは、46歳を過ぎた頃でした。前触れもなく突然体がほてり、めまいがして動けなくなることが増えてきたのです。夜も眠れない日が増えてきて、日中もだるさを感じるようになりました。その結果、なかなか疲れが取れず、家事にも手がつかない状態が続きました。
また、精神面も不安定になって、理由もなく涙が出たり、些細なことで感情が爆発したりすることも増えました。更年期障害によって、以前のような日常が奪われてしまったのです。さまざまな症状に、本人であるかおりさんが一番戸惑っていました。
しかし、そんなかおりさんの姿を見た同年代の夫から返ってきたのは「どうして前みたいにちゃんとできないの?」という理解のない言葉。
「体調不良よりもつらかったのは、理解されないことでした」と、かおりさん。説明しても信じてもらえず、徐々に会話は減り、家庭内は冷え切っていったといいます。
「このまま一緒にいる意味はあるのだろうか」そう考えるほど、夫婦関係は壊れかけていたのです。
■更年期を軽視された妻たちの怒りエピソード
このような更年期を軽視された体験は、かおりさんだけのものではありません。更年期による夫の無理解や夫婦のすれ違いは、多くの人が抱える課題です。その夫の無理解やすれ違いとは、一体どのような内容でしょうか。
◇家事ができないだけで「怠け者」扱いされた
「今日はどうしても体が動かない」と伝えても、「一日中家にいるのに、怠けている」と叱責される。更年期症状の一つであるめまいや強い倦怠感で立っているのもつらいのに、見た目が普通なだけで“怠け”と決めつけられる...。その積み重ねが、怒りと悲しみを増幅させていきました。
◇感情の起伏を「性格の問題」と決めつけられた
「最近、性格がきつくなった」「情緒不安定」という言葉に、深く傷つけられたという声も多くあります。イライラしてしまう自分を責めているのは、更年期障害に苦しむ妻本人でもあります。
「好きで怒っているわけじゃない」その強い気持ちが、なかなか届かない現実があります。
■そもそも更年期とは?夫が知らない“体と心の大きな変化”
多くの女性が、40代から50代にかけて更年期症状に悩まされると言います。そもそも更年期とは一体どのような症状・状態を指すのでしょうか。
◇更年期は「気持ちの問題」ではなくホルモンの変化
更年期になると卵巣の働きが弱まり、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少します。その影響でホルモンバランスが崩れ、月経不順をはじめ、体や心にさまざまな不調が現れやすくなります。症状の現れ方や程度には個人差がありますが、こうした不調全般を「更年期症状」と呼び、仕事や家事など日常生活に大きな支障を及ぼすほど重い状態は「更年期障害」とされています。
◇症状の出方には個人差があるからこそ誤解されやすい
前述の通り、更年期症状には個人差があります。イライラやうつ症状、ほてりやのぼせ(ホットフラッシュ)、肌の乾燥まで、その他にも様々な症状が人それぞれ異なってあらわれるのが更年期症状です。中には、更年期症状とよく似た別の病気と勘違いされるケースもあります。このように症状には個人差があり、家族にも理解されづらいことがあるため、妻は孤独感を強めていくのです。
■夫婦で乗り越えるために必要な視点転換
更年期症状は個人差があり、夫婦で理解のすれ違いがおきてしまうのは、もしかすると仕方のないことかもしれません。それではどのように夫婦で更年期症状を乗り越えていけば良いのでしょうか。
◇夫側-全部分からなくても、否定しない姿勢を持つ
更年期は個人差がありますので、すべてを完全に理解する必要はありません。ただ、「本人が辛いと言っている事実」を否定しないことが何より大切です。「そう感じているんだね」と受け止めるだけで、妻の孤独感は大きく和らぐのではないでしょうか。
◇妻側-体調が悪い時のルールを事前に共有する
妻側は、調子の良い時に、「こういう日は助けてほしい」「無理な時は休む」と具体的に伝えておくことも、有効ではないでしょうか。感情的になりやすい時期だからこそ、事前の共有がトラブルを減らすかもしれません。
◇夫婦でできること-医師の説明を一緒に受ける
可能であれば、夫婦そろって医師の説明を聞く機会を持つのも有効です。専門家から医学的な視点で説明を受けることで、更年期が気持ちの問題ではないことを客観的に理解しやすくなります。第三者の言葉は、夫が状況を受け止めるきっかけとなり、妻のつらさへの理解を深める助けにもなるでしょう。
■更年期は妻だけではなく“夫婦の問題”
かおりさんは、夫婦で医師の説明を受ける機会をもうけてから、夫が分からないなりに協力してくれるようになったといいます。
「私が横になっている時には、お皿を洗ってくれたり洗濯を畳んでくれるようになりました。心無い言葉も減ったように思います」
また、かおりさんの更年期症状を通して、浜谷さんご夫婦は、結果的にコミュニケーションをたくさんとるようになったといいます。
「更年期は、妻一人が耐えるものではない」
そこから始めてみませんか。
支える側の言葉一つで、関係は壊れもすれば、深まりもする。
「甘え」「サボり」と切り捨てる前に、知ること、信じることから始めてほしいのです。
更年期は、夫婦の在り方を問い直す時期でも、きっとあるのです。
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症2型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。
(まいどなニュース/もくもくライターズ)

























