叱りたくなる衝動には、親の性格だけでなく、人間の脳に備わった仕組みが関係しているようです。フクチマミさんと村中直人さんによる作品『もう叱りたくないと思ったら読む本-子育て世代の新常識 マンガ〈叱る依存〉がとまらない』では、子どもの自分で考える力を育むために「叱る」に頼らず子どもと関わるための考え方や方法が描かれています。
同作の『第5話 叱るのは快感?』がX(旧Twitter)に投稿されると、約7800のいいねが集まりました。
芸能人のスキャンダルに批判が殺到したり、悪いことをした子どもを過剰に叱ってしまったり、人間は悪いことをした人を見ると叱りたいと思ってしまうものです。著書によると、実はこの衝動には、人間に生まれつき備わっている"処罰欲求"が関係しているそうです。
処罰欲求は、悪いことをしている人を見たときに「許せない」「懲らしめたい」と感じる欲求です。これに従って相手を非難したり罰を与えたりすると、欲求が満たされて清々した気持ちになるのです。
ある有名な学術雑誌の論文でも、ルール違反をした人を罰することで脳内の報酬系回路が活性化するという研究結果が報告されています。悪役が最後に罰を受ける勧善懲悪の物語を見てスカッとした気持ちになるのも、これと同じ仕組みです。
処罰欲求には社会の秩序を守る役割もあるため、一概にすべてが悪いとはいえません。ただ暴走するおそれもあるので注意が必要です。処罰欲求が暴走すると、相手の行動を正すためではなく、自分の欲求を満たすために効果がなくても叱り続けてしまいます。
処罰欲求の暴走は、家庭で子どもを叱るときや学校、職場、SNSなど身近なところで頻繁に起こっています。特にネットでは直接会わなくても簡単に他人を非難でき、気軽に処罰欲求を満たせるので暴走につながりやすいのです。
「子どものため」と思って叱っているつもりでも、もしかしたら自分の欲求を満たすための行動になってしまっているかもしれません。
読者からは「正義のふりしたストレス発散だよね」「これ全員見た方がいい」などの感想が寄せられています。そこで、同作の著者であるフクチマミさんに話を聞きました。
■この本を読んで「叱る」を手放せる瞬間を増やしてほしい
-『もう叱りたくないと思ったら読む本--子育て世代の新常識 マンガ〈叱る依存〉がとまらない』はどのような本ですか?
過信されている「叱る」の本当の姿を見つめて、子どもの力を育みつつ「叱る」とうまく付き合うための本です。
「叱る」を手放した星から来た、脳オタクの宇宙人ムラナカが、「叱ることには効果がない」と言い放つところから物語が始まります。この漫画の理論の元になっているのは、SNSでも話題になった『〈叱る依存〉がとまらない』(村中直人/著)です。
子育て世代からの反響が大きかったので、忙しい子育て中でも読みやすい実践書として、新たに具体的な育児エピソードを絡めて漫画にしました。
-フクチさんは過去に子どもを叱ることで悩んだ経験はありますか?
もちろんあります。子育ての疲れや不安、孤独感で余裕がなくなったときに、必要以上に叱ってしまうことに悩んでました。イライラの発散や「助けて」の表出だったんだと思います。
あと…言いづらいのですが、叱っている最中にどこかスカッとする気持ちよさも感じていました。処罰欲求が満たされたからですよね。でもその後に罪悪感を抱えることになって、悪循環でした。
-この本をどのような方に読んでいただきたいですか?
「叱りたくないのに、叱らずになんていられない…」と悩んでいる人や、「叱らないでほしい」と思う相手が周りにいる人に読んでほしいです。
叱ることそのものや、子どもの成長について捉え方が変わって、じわじわと行動が変化していくのを感じられると思います。実際に私も3年ほど前に本を読んでから、じわじわと「叱る」を手放せる場面も増えて、子どもとの関係性も良くなりました。
(海川 まこと/漫画収集家)























