記事特集
厳しい寒さの中で、お年寄りが立ち尽くしている。疲れきって、しゃがみこんでいる人もいる。朝早くから並んで、もう五時間にもなっている。
神戸市など各市で始まった、罹災証明書(りさいしょうめいしょ)の発行と、全国から届けられた義援金の配布に、被災者がどっと押し掛けた。
神戸市中央区の磯上公園では、まだ暗い午前五時ごろから列ができ始めるという状況が二日も続いている。初日の六日には雪が舞い、お年寄りが倒れないかと心配した職員が、軒先へ避難させたほどだった。
罹災証明書は市の調査に基づいて、全壊、半壊、一部破損、全焼、半焼などが対象で、そのうちの全壊、半壊、全焼、半焼については別の窓口で義援金交付書も発行される。義援金十万円は死亡者、行方不明者にも交付される。しかし、市の損害調査の判定などに納得のいかない被災者が続出し、異議申し立てが起きるケースが多くなった。
だから、どうしても時間がかかる。そこで市職員が急きょ、受け付けを締め切り、整理券を渡して翌日に来るように呼び掛けていた。疲れ切って並んでいた人たちにとっては、一日が無駄になるつらい事態だった。とくに遠方などに身を寄せている人にとっては、また長い時間をかけて出直さねばならない。
この状況は、先日に行われた解体手続きのときにも見られた。出掛けていって並び、あきらめて帰ってきた人が多かった。慣れない仕事と、人手不足という事情はわかるが、もう少し被災者の立場に立った配慮ができないものか。長時間、無駄に並ばせない工夫ができないか。
罹災証明書の発行は、神戸市が期限日を決めないなど、時間的な余裕がある。その日の生活費に困っている人は、義援金が一刻も早く欲しいが、そうでない人はあわてる必要はない。ところが、そういう情報が十分に伝わっていない。被災者はいつも不安の中にいる。きっちりした情報と安心感を伝えてほしい。
窓口の充実も考えたい。市の職員が足りないなら、応援も要請したい。さらに対応の仕方の工夫が欲しい。一日の処理能力を考慮し、多数が並ぶ前に翌日になるという呼び掛けをし、整理券を渡すこともできるはずである。
被災者はみんな、大きな不安を抱えている。自分の住んでいた家がどうなるのか、罹災証明がでるのか、必死の思いなのだ。その判断を求めて、神戸市役所にあるボランティア建築士グループに問い合わせが殺到し、電話も通じない状況だ。不安がみんなを走らせている。
兵庫県や市の窓口は、そんな不安への心強い拠り所なのだが、その肝心の窓口が混乱の極みなのである。県の住宅の窓口にしても、仮設や公営、民間など多くに分かれているため、被災者は右往左往している。被災者の身に立った態勢に、ぜひ立て直してもらいたい。
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