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復興へ 第18部 この国 震災3年の決算

(8-2)インタビュー 草の根レベルの支援を聞く
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 阪神・淡路大震災の被災地に、全国から駆けつけたボランティア。そこで得たさまざまな教訓をもとに、災害と向き合うボランティアのあり方を求める動きがある。西宮市を拠点に、災害救援に的を絞って全国的なネットワーク形成に乗り出した「日本災害救援ボランティアネットワーク」、東京で市民を対象に、応急救助などの専門的なボランティアの養成を始めている「災害救援ボランティア推進委員会」などだ。両グループが目指す草の根レベルの支援について、同ネットワーク代表の伊永勉さんと、推進委員会事務局長の澤野次郎さんに聞いた。

調整や安全管理のプロを目指す
 災害救援ボランティアネットワーク代表 伊永勉氏

-災害ネットワークづくりの必要性を
 「日本は災害列島だが、地域ごとに被害は異なってくる。どこで災害が起きても、その被災地に必要な手段を持っている人、被災地に届けるべき知恵を持っている人がそれぞれに分かっていれば、有効な災害救助が実践できる」

-課題は
 「米国でも全米に広がるまでに二十六年間かかった。トップ争いや個人的な好き嫌いも影響したと聞く。約束は必要ないし、拘束もしない。顔見知りになって話ができるような関係になればいいと思う」

-被災地ではボランティアが災害に巻き込まれる可能性がある
 「日本海重油流出事故ではボランティアの死者が五人出た。しかし、最も被害の大きかった福井県三国町では出ていない。まず健康チェックを徹底した。屋外作業は最長一時間半と決め、防寒具の用意のない人や高齢者には屋内での作業に取り組んでもらった。ボランティアの活動の場づくりのために、調整や安全管理のプロを目指したい」

-行政と連携すると、ボランティアの自主・自律が損なわれるとの意見もある
 「行政の下請けといわれようが、よかれと思うことをしていけばいい。ボランティア側も責任の取れないことはできない。被災者の復旧、復興は国など行政の義務だ。しかし、登庁した職員も少ない機能不全の行政と私たちが一体となって、行政に一刻も早く回復してもらい、義務を果たしてもらった方がいい」

-NPO法案が議論されているが、NPOやNGOは日本で育つだろうか
 「草の根の活動を行っている小さなNPOを支援するNPOが必要になってくる。弁護士や公認会計士など専門家もボランティアで協力したいといっている。生かす手を考える時期だろう」
 「NPOは非営利組織と訳されるが、電話代など事務経費は必ずかかる。すべて手弁当ではできない。NGOも非政府だが、反政府との認識の人もいる。議論の中で、それぞれきちんとした認識が持てるように整理すべきではないか」

メモ

日本災害救援ボランティアネットワーク

 大震災時に全国からのボランティアと西宮市をコーディネートして、緊急物資の仕分けなどで効果をあげた西宮ボランティアネットワークが前身。九六年一月に設立し、関西で官民産学の研究会を立ち上げた。二月には全国ネット結成に向け、神戸で第二回準備会を開く。

民間レベルでサポートする人材教育
 災害ボランティア推進委員会事務局長 澤野次郎氏

-推進委の出発点は
 「阪神大震災だ。政府の官房副長官だった石原信雄さんが委員長を務めているが、あの時、首相官邸にいて初動の遅れが指摘された。私たちが被災地に行き、導き出した教訓は、あの規模の大地震には、自主防災の必要性とともに、震災直後に行政は当てにならないということだった」

-現状は
 「災害直後の三日間は外部の応援が得られにくい。まず、自分の身を自分で守るため、災害に備えて平素からできることや、救命救急の基礎的な知識、技術について、消防機関の専門家らの講義を受けている。自分が生き残らなければ、ボランティアもできない」

-これからの活動は
 「教育を受けた卒業生のうち、約五百人強が引き続き、避難所への誘導など近所の人たちを救える教育訓練を続けている。直後の混乱が落ち着いてくれば、既存の地域組織に引き継いで協力し合う。日ごろのコミュニティーのつながりも大切な点だ」

-大震災から三年がたつ。風化も激しいのではないか
 「東京は、あの震災を目の当たりにして、時計は惨事に向かって時を刻んでいると思っている。しかし、風化を止められないのも確かだ。行政頼みでなく、民間レベルで意識を持つ人を育成していくのが次の災害への備えと思っている」

-行政への注文は
 「災害は行政機関も被災者にしてしまう。無策を批判するのは簡単だが、行政にもできることと、できないことがある。行政は防災計画をもっと公開して、災害時の動き方を地域と事前に話し合い、こちらも行政の限界を知っておくべきだ。高齢者のケアなど長期にわたる問題は行政の責任分野だろう」

-NPO法案が通常国会で論議されるが、法成立後の課題は
 「日本にはボランティアを奨励するような法はなかった。広くボランティアの後押しにはなるだろう。しかし、NPOとして法人格を持っているか否かで、線引きができるのはまずい。団体はその活動や実績で評価されるべきだ」

メモ

災害救援ボランティア推進委員会

 一九九五年七月に東京電力や東京ガス、NTTなどライフライン関係企業のトップや官僚OBらが東京で結成した。大手企業約百社が運営に協力。サラリーマンや学生、主婦ら市民を対象に、災害救援のできるボランティア養成講座や登録制度を設けている。同年末には第一期生が修了した。

1998/1/22

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