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復興へ 第18部 この国 震災3年の決算

(5-3)インタビュー 街づくりの現状を問う
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議論置き去り 進む事業
 震災三年を迎えた街づくり。区画整理、市街地再開発の事業地域では住宅やビルの再建が進み始めた。「早く事業の進展を」との声が強い一方、住民には「なぜ区画整理か」という疑問がくすぶる。住民や専門家らが指摘するのが、行政が都市計画決定するまでの住民参加、合意のあり方だ。震災後、建設省技術審議官から兵庫県副知事に転じた溜水義久氏と、近畿大教授(都市計画)の安藤元夫氏に現状と課題を聞いた。

進ちょくに一定評価 特措法で転換は混乱招く
 溜水義久・副知事

-震災三年の街づくりを総括してほしい
 「震災直後の混乱期は(住民の反応は)ノーだったが、話を重ねた結果、前に向かって進んだ。それに時間が少しかかった。戦災復興に比べればこれだけ大規模な被災で、うまく進んできていると評価したい」

-都市計画決定を急ぐ必要があったのか
 「経験則から言えば、時間をかければうまく進む話でもない。行政側にそういう余裕もなかった。土地の買い占めや、土地を売りたい人も出てきた。街づくりをやろうとすれば、そこを押さえる必要があった。早くやるには意思決定を早くしないと。実質的な部分を考えると、早く事業を進めた方が権利者のためになる。復興を早める」

-合意形成にもっと時間をとの声がある
 「いろんな意見があるのは確かだが、その意見を事業の方向で議論するのが早期復興につながる。行政の意思を早く示すべきだ。どうしましょうか、ではなく、こういう方向で、という形で進めてきた。進むところは進んだが、混乱したところは時間がかかり過ぎた。最初からこの地域はもめそうだから時間をかけましょうということはできない」

-行政の意思とは何か
 「元のままの復旧となれば、まず家を建てられない人が出てくる。狭小な道路の中で危険な街を再生することになる。そういうことがないように、早期復興のために一緒に街づくりをしましょうということだ」

-震災後に施行された被災市街地復興特別措置法の活用で、都市計画決定の延長も可能だったが
 「法律がいつできるか分からず、行政はこういう方向でと、すでに走り出していた。方針転換は無用の混乱を招く。先ほどの実質的な部分を考えると、被災市町は、既定方針通り進む方がベターと判断したのだと思う」

-計画変更はどこまで柔軟にできるのか
 「今回は当初決めた骨格案と、その後に柔軟に対応した話し合いの結果を重ねる二段階方式で対応した。森南地区では道路の位置や幅員なども変えた。しかし、事業をやる範囲は変えるべきではない。街づくりをやるべき地域として決めたわけだから。そこまで応じるわけにはいかない」

-今後の災害ではどう対応すべきか
 「特別措置法を適用したらいいと思う。議論の期間をつくり、早くまとまったところは区画整理をやればいいし、時間がかかりそうなところは、二年間じっくりやればいい。しかし、(措置法を)かけたとしても、すぐに区画整理などの事業法にかけ土地が売れるようにするなどの対応をすれば良い。だから、そこに行政の決断がいる」

生活再建まだこれから 特措法の中で合意点を
 安藤元夫・近大教授

-震災三年の総括は
 「住民生活にかかわる部分の復興はまだで、人も地域に戻れていない。区画整理でいえば、行政との対立関係を持ちながらも、一定のレールに乗ってきた」

-震災直後の都市計画決定をどう評価するか
 「住民不在、非民主的で、最初に計画決定ありきだった。その後、行政主導で協議会をつくって住民が参加するやり方は、明らかに後先が逆だ。受け身になった住民は基本的に、その枠内でものを言うわけだから、頑張れるところは対立、あきらめたところは従順という構図になった。住民が行政と一緒に街づくりを考えるという機会が失われた」

-では、どう対応すべきだったか
 「建築制限を延長できる特別措置法が用意されたのだから、その中で合意点を探るべきだ。それが行政の決断といえるだろう」

-住民参加と合意をどう進めるべきか
 「合意形成を通じ、街の姿が見えてくる。行政は当初、こんな事業手法が考えられる、といったいくつかの選択肢を含めた提案にとどめることも考えられる。合意には、いろんな幅があっていい。事業を大がかりにやりましょうから、事業はいりませんまで。行政は主導的に事業を提起してもいいが、論拠と理屈の上で話をしなければ。今回の二段階方式は、住民の意向を全然聞かないわけじゃないという行政の言い訳の側面が強い」

-住民が事業を不要と判断すれば、それは撤回になるのだろうか
 「街づくりとはそういうものだ。合意ができたところで進めるべきだし、危険でも住民がこれでいい、と言えばそれでもいい。しかし、対等な議論がされれば、密集地などでは住宅再建を進める住民自身が何らかの事業を選ぶと思う。いずれにしろ、今の行政は掛けた網を絶対外さないが、議論の行方によっては引き返すことが必要ではないか」

-三年たった行政、住民の問題点は
 「行政は、問題が解決できないところまでいかないと住民要求に対処できない、官治的な体質から抜けきれない。住民も、街づくり全体と個人の利益に絡む減歩などの話がかみ合わないほか、反対の声が通りやすく、そこから全体のスタンスを変えていけない」

-専門家の役割は
 「対立の過程を乗り越え、合意をつくるためにはその働きが重要だ。ただ、行政・コンサルタント・住民という今の構成に、住民にもっと軸足を置く専門家を加えた、四者による協議会のようなものが必要だろう」

-今後の災害にどう備えるべきか
 「『事前復興』という考えが有効だ。平時から災害後の街づくりを想定することが、街の課題に対する住民の共通認識を育てる。災害が起きなくても、そのプロセスは通常の街づくりにも、意義ある成果をもたらすだろう」

1997/1/17

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