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復興へ 第18部 この国 震災3年の決算

(6-1)耐震向上 備えにも「公的資金論」
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 ほんの数秒、わずかだった。だが、断層をよく知る担当者には、新春気分をさめさせる揺れだった。
 三日午前八時十三分、兵庫県南西部を震源とする地震が発生した。佐用郡佐用町で震度2。大阪管区気象台によると、播磨内陸部に延びる山崎断層に関連した地震という。
 兵庫県は昨年秋、調査結果をもとに「山崎断層の活動周期は千数百年から二千数百年で、約千百年が経過している」と発表している。
 その数字が何を意味するのか。担当者は「あす発生する可能性は低いが、否定もできない」と話す。
 「今後、精査する」という前提で、県が積算した未公表の数字がある。
 死者三千人
 負傷者一万五千人
 全・半壊十一万三千棟-。
 山崎断層による大規模地震の被害想定。西播磨一帯に及び、阪神大震災のほぼ半分に匹敵する。
 「姫路などには、戦災を受けなかった木造の老朽家屋が数多く残っている。改修など対策はなかなか進まない」と県は悩む。

    ◆

 九五年末、耐震改修促進法が施行された。公共性を持つ建築物に、耐震診断・改修の努力義務を課した。

 法案を審議した衆院建設委で、当時の建設相・森喜朗は述べている。

 「国民が関心を持っているうちに(改修を)促進したい。のど元過ぎれば熱さを忘れるというか、だんだん日とともにそのことが忘れ去られてはいけない」

 しかし、動きは極めて鈍い。建設省によると、現行の建築基準法に適合しない「既存不適格」の建物は、個人住宅を含め三千五百万棟とされる。制度の柱である改修の低利融資の実績は昨年九月段階でゼロ。前提となる認定件数も三百二十件にとどまる。

 姫路市中心部に近いビルの所有者に聞いた。「公共性を持つ建物」で、複数棟の一部は既存不適格。阪神大震災では、こうした建物の三五%が大破・倒壊したとの統計もある。所有者は話した。

 「耐震改修の予定はない。工事費や休業の損失を考えると慎重にならざるを得ない。必要は認めるが、投資効果に見合わない」

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 状況を打開するため、日本建築学会では「既存不適格の建物に危険税を課しては」との議論が交わされた。

 建設省建築研究所の振動研究室長・大橋雄二は「国の決意として、人命を守り、安全を高めようとするのなら、公的資金投入を検討すべきではないか。道路に財源を注ぐより、国民の理解を得られる」と話す。

 阪神大震災では、建物の解体に公費が投じられた。備えに公的資金をとの声は、大橋だけではない。

 だが、建設省住宅局長は、衆院建設委で「何らかの改修助成に踏み込むべきでは」との議員の質問に答えている。

 「建物は私有財産でストレートに補助金を出すわけにはいかない。使いやすい資金の用意や税制上の措置で対応したい」

 今、検討されているのは昨年十一月、施行された密集市街地整備促進法の活用だ。対象地域では、借家人らを保護する借地借家法の除外も盛り込み、老朽家屋の建て替えを促進する。

 城下町の面影を残し、路地が入り組む野里地区周辺や、海岸部などを想定し、姫路市は来年度、同法の事業化調査に入る。市幹部は話す。「調査結果と、実際の事業は別の話。住民に災害は来ないという認識が強ければお手上げです」

 決め手を欠く国の対策と住民の意識。なかなか答えは出ない。

1998/1/19

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