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復興へ 第18部 この国 震災3年の決算

(7-1)復旧”終了”後 荒波に打つ手は乏しく
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 神戸・ポートアイランドの神戸国際展示場。屋内は二十一日に始まる見本市の準備であわただしかった。

 日本ケミカルシューズ工業組合の百四十六社が、「この夏」をにらんで出品した色鮮やかなサンダルや婦人靴が並ぶ。その中に、初めての大型スクリーンが据えられた。

 画面には、三次元の靴の木型が映し出され、コンピューターで木型をつくる。最後に平面の紙型まで落とす。

 「三カ月かかったサンプルづくりが三日でできる。ファッションは回転が早い。消費者ニーズをつかんで、早く商品化しなければ」と、同組合事務局次長の鈴江英治。

 別のブースでは、インターネットで、問屋や消費者が好みの商品を選べる遠隔商談システムが動く。いずれも、ハイテクを活用した「ケミカル再生」の取り組みである。

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 産業復興の緊急三カ年計画は三月末、終了する。三年の目標は「震災前の生産水準回復」。兵庫県は、各種のデータから九九・四%まで戻ったと推計する。

 しかし、担当者は「悩ましい数字」と打ち明ける。データは、業種や地域、企業規模による格差を如実に示しているからだ。

 大企業が引っ張る鉱工業生産指数や使用電力量は一〇〇%以上。神戸港の貨物取扱量や観光客は約八五%。ケミカルの生産額は、水準にはるか遠く、六〇%前後にとどまる。

 見本市に出展される、画面での「設計製造システム」は、通産省が一億五千万円を助成、組合と川崎重工などが、この二年間開発に取り組んできた。

 鈴江は祈るように話す。「どことも枠いっぱい融資を受け、資金繰りは大変なはず。長田からヒット作を出さないことには何ともならない。メーカーやバイヤーが興味を持ってくれれば」

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 産業復興には昨年九月末までに、百三の施策が打たれた。さらに同十月、震災直後の緊急災害復旧融資の返済期間を一年間延長するなど、国、自治体は三十四項目を追加した。

 だが、「あす倒れないための当面の対策が中心だった」と、神戸市産業振興局は振り返る。返済猶予された緊急災害復旧融資は、総額五千四百二十二億円にのぼる。

 その中で、ケミカルで具体化した通産省の「震災地区産業高度化システム開発実証事業」は、数少ない、あさってのための事業。計四十件が認められ、四十五億円の予算が投じられた。

 インターネットで、デザイナーと広告会社を橋渡しする「アーチストバンク開発」など成功例も少なくない。長田区の「デジコム」は創業二年。社員九人の小さな会社だが、同バンク開発を足がかりに、今年は年商二億五千万円を見込む。

 その事業も終わる。地元の窓口の阪神・淡路産業復興推進機構は、同様の施策継続を要望したが、国は「全国的な公募制度への応募を」と応じた。

 新たな支援策を探る同機構の副理事長・大角晴康は話す。

 「円高が定着し、アジア各国との競争が激しくなっている。他地域の企業に復旧の重荷はない。復旧に追われた三年間を取り戻せる支援が不可欠だ」

 十二日に明らかになった昨年の県内倒産件数は六百九件を記録、過去十年間で最悪だった。景気低迷による淘汰(とうた)の波が立ち上がりかけた企業の足元をすくう。(敬称略)

1998/1/21

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