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復興へ 第18部 この国 震災3年の決算

(1-1)スタート台 上京39回、支援の声上げ
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 通常国会が始まった十二日。本会議の直前、官房長官・村岡兼造が、自民党地震対策特別委の柿沢弘治に一枚の紙を手渡した。

 「政府としては、これが限界だ。検討してほしい」。頼み込むような口調だった。

 「被災者自立支援事業構想(案)骨子」のタイトルで、事業の目的、適用基準などが並ぶ。対象と額は「全壊で年収三百万以下の世帯に上限五十万円。物品購入費など実費支給」とある。作成は大蔵省である。

 午後一時すぎ、「日本を地震から守る国会議員の会」会長・原田昇左右の部屋に柿沢、与党復興プロジェクト座長・谷洋一らが集まった。

 大蔵省主計局次長が部屋に入った。詰問調の厳しい声が部屋から漏れる。

 「この案ではとても納得できない」と柿沢。谷は「これは大蔵の理屈だ。われわれの内容と開きすぎている」と、怒りをあらわにした。

    ◆

 柿沢らは、自然災害の被災者に一時金を支給する災害基金制度の法案化に取り組んできた。

 制度は全国知事会が提唱したが、柿沢らは、当初の知事会案から国の負担を減らした。自治体負担の増加に反発した知事会も最終的には同意。支給額は「百万円を超えない範囲で、別途政令で定める」とした。

 国会法は、予算を伴う法案提出は、内閣の意見を聞くよう定める。「与党の法案には省庁の同意が欠かせない」(自民党幹部)との認識から、調整の含みを残すためだった。

 だが、大蔵省は「財産を税金で補償する個人補償の性格が強い」と一貫して主張、法案原案は十二月、党政策調査審議会で、「政調会長預かり」となった。

 同二十四日、柿沢らは首相官邸の官房長官室に村岡を訪ねた。「役所の方ではなく、われわれの方を向いてほしい」。そう求めた柿沢らに、村岡は、こう答えている。

 「皆さんも、役所もみるのが僕の立場ですから」

 支給額、対象など自民原案との違い以上に、大蔵案が強く打ち出したのは「実費支給。補償ではない」との色彩である。

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 十七日、橋本首相が追悼式出席のため神戸を訪れる。自民党幹事長・加藤紘一は七日の会見で「十七日までに、何らかの結論が出るよう、党として努力したい」と述べている。

 柿沢らは十三日にも、地震対策特別委幹部会を開いて、対応を協議する。

 党と政府側の調整がどうなるのか、まだ不透明だが、阪神大震災の被災者救済策を練ってきた議員らは「何らかの形で決着し、自民案が国会提出されても、スタート台だ」と話す。

 大蔵案はもちろん、自民原案も阪神大震災にそ及しない。国会では、そ及を盛り込み、社民党・田英夫ら超党派議員が出した「支援法案」と、大震災救済に限定した旧新進党などの野党支援法案が、継続審議中。

 田は「公的支援の形を、とにかく通常国会でつくるべきだ。額や対象は話し合える」と指摘する。

 市民サイドから田らと「支援法案」を進めてきた弁護士・伊賀興一は「被災者の生活の土台がつぶれ、そこを見据えた政策が必要なのだということが、党派を超えて認識されるようになったのが、今の状況だ」と、思いを込めて漏らす。

 「ここまでくるのに三年かかった」と。

 「公的援助法」実現ネットワークの市民らは十二日朝、永田町でビラをまいた。上京は三十九回を数える。(敬称略)

1998/1/13

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