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復興へ 第18部 この国 震災3年の決算

(5-1)住民合意 評価割れる二段階方式
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 その夜の会合も、打開の糸口を見つけることはできなかった。

 九日、神戸市東灘区・森南地区で開かれた「森南町・本山中町まちづくり協議会」の委員会。約十人が集まった会合は、二時間近く続いた。終了後、代表の山口正夫は「同じ議論の繰り返しだ」と苦い笑いを漏らした。

 当初、一つだった同協議会は事業の進め方をめぐって三つに分裂、森南町一丁目などは、曲折を経て区画整理に動き出した。

 今、事業計画の展望も立たないのは、区画整理の網が掛かる神戸市内九地区でも、同協議会の森南町二丁目だけである。

 二丁目では、今年度に入り地権者二人が土地を市に売却した。関係者によると、建築制限が長期化し、進展がない状況に耐え切れなくなったためという。

 「なんとかしたい」という気持ちは役員にも強い。だが、同協議会が昨秋行った住民アンケートでも評価は割れた。「承認」から「白紙撤回」まで、方向を打ち出す流れは見えないままだった。

 「長引いた責任は神戸市にある。なぜ、区画整理かという問いにこの三年、納得のいく説明がない」。山口は「三年」と語気を強めた。

    ◆

 「これだけ大規模な被災で、うまく進んでいる。二段階方式の成果だ」と、建設省出身の兵庫県副知事・溜水義久は、全体の復興街づくりをこう話す。

 「二段階方式」とは、区画整理事業を都市計画決定した九五年三月、県が打ち出した方針を指す。計画決定は早くする、しかし、その後は住民合意を図り、修正しながら事業化していく考えである。絵をかいたのは、当時、県に出向中の建設省官僚だったという。

 森南地区でも、一丁目などでは、当初の十七メートル道路を撤回した。道路や公園など、住民案を受けた計画修正は全体で七カ所に及ぶ。

 だが、県も神戸市も、区画整理の対象地域そのものは変更しなかった。「撤回していいかというと、そうはいかない。必要だと決めた以上、一つでも削ると、みんなだめになってしまう」と同市幹部。「二段階方式」は、「対象区域は変更せず」が前提になった。

    ◆

 神戸市は震災わずか一週間後の九五年一月二十四日、対象区域の都市計画素案を建設省に示している。

 建設省側から、須磨区の西須磨地区でも区画整理をという主張があった。住宅の全・半壊が半数近くに及び、基盤整備も進んでいない。が、神戸市は外した。市幹部は「震災前からの反対運動を懸念した。ここだけに労力を割くことはできなかった」と話す。

 森南地区が対象になったのは、庁内で「バランス上、東灘区をすべて白地地区にできない。一カ所、面的整備を」との話が出た。被害が大きく、JR新駅(甲南山手駅)計画で、街の変化に対応する必要があった同地区が選ばれたという。

 近畿大教授(都市計画)の安藤元夫は「街のビジョンを示し、合意に力を注ぐ方が結局、復興を早める。今回のやり方では、住民にとって対立とあきらめという構図しか残らない」と指摘する。

 溜水は「混乱した状況では行政の意思を早く示す方が、復興が早く進む」とし、建設省の技術審議官・小沢一郎は「震災で成し遂げたことは、公民共同と地方分権の街づくり」と言う。

 評価の落差はあまりにも大きい。(敬称略)

1998/1/17

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