連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

復興へ 第18部 この国 震災3年の決算

(6-2)生きぬ教訓 耐震改修 足踏み
  • 印刷

「住」への備え 診断助成は11件
 公共建物も先送り 負担重く手当て欠く

 阪神大震災では、現行の耐震基準に適合しない「既存不適格」の老朽建物や、密集住宅地に被害が集中した。教訓として、こうした建築物の耐震強化が大きな課題になったが、神戸新聞社は、兵庫県と県内二十一市に、建物の耐震診断・補強の実施状況などに関するアンケートを実施した。民間建物の診断は、県が創設した助成制度の利用実績もごくわずか。公共建築物も「診断」は進むが、「改修」は財政上の問題などから先送りされる傾向がある。密集市街地の整備では「長々期の課題」と答えた自治体もあり、震災三年を経過しても遅々とした「備え」の現状を浮き彫りにした。

ネックは費用
 国の耐震改修促進法施行を受け、兵庫県は一九九六年度から、不特定多数が利用する民間建物などの耐震診断に補助制度を新設した。県は対象を二千棟と試算、年間四百件の利用を見込んだが、この二年弱の実績は十一件(認定見込みを含む)にとどまる。

 低調な理由は「診断後の耐震補強へのフォローがない」(洲本市)ことだ。診断で「危険」と判断されても、その後に必要な補強・改修に移れるめどがないから、最初から手を付けないという理屈だ。

 震災の風化も重なり、小野市は「必要性は感じているが、資金を投資してまで差し迫った緊急性を要していない」、相生市は「震災被害がほとんどなく、阪神間などに比べて市民の意識も低い」とする。

 県の制度はもともと個人住宅を除外している。耐震改修促進法が、個人住宅に努力義務を課していないのが理由だが、戦前からも一部残る個人住宅を含めればその足下はもろい。

診断で足踏み
 民間住宅に比べ、庁舎など自治体の公共建物の耐震診断では、十九市が「診断済み」「診断中」と回答した。しかし、改修は多額の経費を要し、数年単位で順次実施する市が多い。

 公共建物は庁舎のほか、病院や学校、公営住宅、文化施設など多くある。神戸市は百二十三施設(営繕課所管分)のうち、三十九で診断を行ったが、補強実施は消防など三施設。整備は「防災拠点、消防、病院、庁舎などから」とする。その考えは一般的だが、後回しの施設改修は、具体的に決まっていない市が多い。

 改修は国の補助制度が不十分で、神戸市では、一件当たり平均六千万円を超す費用が自治体に重くのしかかる。豊岡市は「市庁舎の全面改築も財政事情から先送りせざるを得ない」とする。

 「耐震診断で危険のお墨付きをもらうと、早急な対策を迫られ、困った立場に追い込まれる」と、診断自体を見送った市もある。

守られない法律
 大震災では、新しい建物でも、違法建築や欠陥・手抜き住宅が被害を拡大させたとされる。背景に指摘されるのが、震災前から建築基準法で義務付けられている「建築完了検査」の不徹底だ。

 神戸市などを除き、十二市七十町を担当する県の九六年度実施率(建築確認申請に対する検査済み証発行率)は四二%。他市も多くが五〇%前後にとどまる。

 低調な状況について県建築指導課は「多くの建物は罰則規定がないほか、検査に伴う実質的なメリットがない。税金を安くしたり、売買や賃貸時に有利になるなど誘導策があれば結果も違う」と指摘する。

 政府は開会中の通常国会に建築基準法の抜本改正案を提案する方針だが、目玉とされるのが、建築基準の性能規定化と、それに伴う建築確認事務などの民間開放だ。完了検査の底上げにもつながると期待される。

密集新法の動き
 昨秋に施行された密集市街地整備促進法。建て替え計画の認定に伴う補助制度や、危険建物に対する除去勧告など「アメとムチの誘導策」(建設省市街地住宅整備室)を盛り込んだが、十分に浸透しておらず、事業申請する考えを明らかにしたのは神戸、宝塚の二市だけ。明石、加古川、伊丹市が「検討する」と答えたほか、姫路市が九八年度に調査に入るなど、様子ながめの感が強い。

 密集市街地の整備は、七〇年代から国が予算をつけてきたが、面的な整備はあまり進んでいない。神戸市は法律に期待を示す一方、多くの密集市街地を抱える尼崎市の担当者は「震災復興の進度状況をにらみながら対応したいが、これまでの事業の進ちょくを考えると、いずれにしろ長期、長々期の事業になるのは避けられない」と話す。

 同法の運用は、法案審議時から、周辺を含む住民の理解が得られるかどうかがカギとされてきた。被災地でも面的整備事業に対する大きな反発があり、平時ではなおさら、という懸念だ。アンケートでも「課題は関係者間の調整」(西脇市)などの回答がある。

メモ

兵庫県、21市 耐震アンケート結果

民間建物の耐震診断に伴う助成実績(見込み含む)
 5件 姫路
 3件 西宮
 1件 神戸、明石、加古川

低調な実績の理由、評価
*補強や改修にカネが出ない。木造賃貸住宅は診断・補強より建て替えが効率的。震災から時間が経過し、制度と現実に距離が増している(伊丹)
*診断結果が出ても改修費のめどが立たない。対象に個人住宅が含まれていない(神戸)
*補助限度額が低く、所有者の負担が大きい(尼崎)
*対象建物は老朽化が進んでおり、新規建て替えの意向が強い(三木)
*震災被害を受けていないため危機感薄い(豊岡)
*PR不足、知らない人多い(加古川、明石)
*改修工事中の代替住宅の確保が困難。壁が増えるため手狭になるのを嫌う(西宮)

公共建物の耐震診断の実施状況
実施済み……8市
実施中………県と9市
実施予定……1市
予定なし……3市

耐震診断・改修に対する考え
*庁舎、学校は災害時の避難所になるので早急に手をつける。公民館や公営住宅は実施予定だが、具体的には決まっていない(芦屋)
*学校はすべて補強が必要で、97年度から実施中。老朽化した病院は補修に耐震補強を入れる(加西)
*診断の結果、必要な場合は財政状況を勘案のうえ計画的に予算措置する(西宮)
*市財政との絡みで緊急性がない(川西)
*改修費を地域防災緊急事業5カ年計画に計上する(赤穂)

建築完了検査の実施率
兵庫県…42%
神戸……47%
姫路……40%
尼崎……27%
明石……48%
西宮……46%
伊丹……54%
加古川…54%
宝塚……49%
川西……57%
※兵庫県分は所管する12市70町の実績(1996年度、県調べ)

密集市街地整備法に基づく事業予定
国に申請予定……神戸、宝塚
検討・調査実施…姫路、明石、伊丹、加古川

1998/1/19

天気(12月3日)

  • 15℃
  • ---℃
  • 20%

  • 13℃
  • ---℃
  • 50%

  • 16℃
  • ---℃
  • 10%

  • 15℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ