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復興へ 第18部 この国 震災3年の決算

(2-1)補償せず 「原則論」支援遅れ招く
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 本会議の合間を縫って、十三日午後、自民党の原田昇左右、柿沢弘治、谷洋一らが、控室に集まった。

 十二日示された被災者支援の「大蔵案」への対応を協議するためだった。午後四時半、党本部で開かれた会合には、全国知事会の地震対策特別委員長で、静岡県知事の石川嘉延らも顔をそろえた。

 「大蔵案は、低所得世帯を対象にした社会保障の考え方だ」と柿沢。原田は「案は(実費支給の考えで)領収書を取れというのか。災害ではできっこない」と声を上げた。

 大蔵案は、「基本的な考え方」の最初に「現行の災害対策のスキーム(枠組み)は崩さない」とうたう。

 十二日、記者会見した官房長官・村岡兼造は「踏み込みが足りないという声がある」と認めながらも、「個人補償の問題が非常にある」と発言。柿沢らが進める基金法案が「家財購入など当面の自立支援のために」とすることについて、個人補償に当たらないか、との国の懸念をにじませた。

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 九五年一月二十六日、大蔵大臣・武村正義は衆院予算委員会で「国の基本を踏まえれば、個人の財産は個人で維持すべきもの」と答弁した。震災発生からわずか九日後。まだ大混乱が続いていたころである。

 当時、大蔵省は各省庁にも働きかけていたらしい。

 国土庁防災局長だった日本道路公団理事、村瀬興一は振り返る。

 「『お見舞い』という形でお金を渡してはどうか、と震災担当の小里大臣(現・総務庁長官)に進言した。ところが直後に、大蔵省幹部から電話があった。『ほかは何でもやるから、現金給付だけはやめてほしい』という内容だった」

 同様の話は、災害救助を担当する厚生省社会援護局でも持ち上がっていた。災害弔慰金と別枠で見舞金を給付する案だった。が、検討の前段階で、大蔵省から「個人補償につながることはやめてほしい」との連絡があったという。

 武村が否定した「個人補償」は、どの範囲までか。公式見解は以降、整理されないまま、歯止めとして働いていく。

 被災者が自ら仮設住宅を建設した場合の補助は、「私有財産形成に当たる」と見送られた。民間宅地の擁壁修理は、倒壊で公道に被害が及ぶ場合は「道路災害復旧事業」と認めたが、擁壁部分用地の道路管理者への寄付を前提にした。

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 国土庁防災局は「被災者支援は、公共基盤整備や住宅建設など現物給付が基本」と話す。

 仮設住宅から復興公営住宅建設へと、「器」は用意するが、家屋再建支援でも別の道は認めない。大蔵案のいう「災害対策のスキーム」である。

 作家・小田実らと「公的支援法案」を進めてきた弁護士・伊賀興一は、個人補償について「米国では、資本主義だからこそ自助努力の土台回復の支援が必要とされている」と主張し、「住宅再建・確保に公的資金を出していく位置づけを、はっきりさせたい」と力を込める。

 十三日、柿沢らは基金法案の骨格はそのままに、所得制限額を下げた修正案を出すことを決めた。「これで役所が乗らなければ、押し切る」と柿沢はいう。

 大蔵案が「第一段階」とすれば、「家財購入」の基金法案は、その先の段階になる。しかし、住宅再建支援を求める小田らの「公的支援法案」は、まだそのかなたにある。(敬称略)

1998/1/14

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