連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

復興へ 第18部 この国 震災3年の決算

(3-1)支援の格差 広域災害に仕組みなし
  • 印刷

 「兵庫県で支給される中高年自立支援金は、豊中ではどうなっていますか」

 昨年十二月一日、世帯主が四十五歳以上の被災者に月額最高二万円を支給する新制度が、兵庫県内でスタートすると、豊中市に被災者から電話が入った。

 「兵庫県の事業で、こちらに制度はありません」と担当者。が、全・半壊一万五千世帯を超える同市の被害は大阪府で最大だ。受話器の向こうから、「同じ被災者なのに」と、納得できない雰囲気が伝わってきた。

 支援金の財源は、兵庫県、神戸市が「財団」に出資、貸し付ける震災復興基金。交付税措置など国の関与がなければ成り立たないが、被災自治体の自主的な取り組みという建前である。そこに、府県を境にした差が生じた。

    ◆

 同基金は九五年四月、県などが国に働きかけて実現した。大阪府は「被害が府域全体に占める割合は低い。基金がなくても、通常の枠組みでやっていける」と要望しなかった。

 だが、府関係者は、ほぞをかむことになる。

 九六年十二月、高齢者らの生活再建支援金支給が決まった。税金を財源とする現金給付は個人補償につながると、基金に三千億円を積み増し、財源にあてる方法を取った。

 急きょ、大阪府は、府と各市が一般財源から必要額をねん出、兵庫と同じ内容の支援制度をつくった。

 今回の中高年自立支援金は、いわば第二弾。府は「厳しい財政事情で、従来の福祉施策も見直している。被災者とはいえ、中高年層を対象にした支援策に、府民の理解を得るのは難しい」と見送る方向だが、豊中市防災課長の西川民義は、釈然としない。

 「同じ災害で支援策が違う。これを教訓に、国、都道府県、市町村の各段階で支援すべき内容を、税金かそれ以外の手法かも含めて考えておくべきではないか」

    ◆

 避難所運営や仮設住宅建設などの応急対策は、災害対策基本法や災害救助法で国の位置付けがある。だが、被災者の生活復興には仕組みがない。

 阪神大震災後、教訓を洗い直した首相の私的諮問機関「防災問題懇談会」は九五年九月、大規模災害の生活支援として、全国自治体が一定額を積み立てる「災害相互支援基金」の検討を提言している。

 それから約二年半。国土庁防災局長の山本正尭は「国がどういう形で支援するかの枠組みも決めておく必要がある」と話すものの、検討は進んでいない。公的支援をめぐる法案の行方を見守っている状況だ。

 自治省大臣官房参事官の滝本純生は「阪神大震災の復興基金は今後、災害が起きた時の前例になる」としながらも、「災害被害の様相は千差万別。災害が起こってから考える方が柔軟に対応できる」と言う。

    ◆

 十三日、東京都は大震災に備えた「生活復興マニュアル」を策定した。
 住宅再建に対する支援、雇用、福祉対策などを網羅する。復興基金創設も盛り込み、対策の財源の一部は基金活用を想定する。しかし、国と詰めたものではない。担当する政策報道室特命担当部長の谷川浩道は「マニュアルをつくれば、国にも認識してもらえる」と話すが、担保はない。
 基金は「自治体の主体的な取り組み」という建前。そこから、被災者の生活復興に対する国の責任と役割は見えてこない。(敬称略)

1998/1/15

天気(12月3日)

  • 15℃
  • ---℃
  • 20%

  • 13℃
  • ---℃
  • 50%

  • 16℃
  • ---℃
  • 10%

  • 15℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ