小児がん啓発の国際的な「ゴールドセプテンバーキャンペーン」に合わせ、姫路城(兵庫県姫路市本町)が9月28日夜、ライトアップされた。国内では5年目の取り組みで、姫路市では初開催。機材の関係で光は象徴の金色ではなく黄色となったが、実現に走った一人の母親の願いをのせ、白亜の大天守が輝きを放った。
国際小児がん学会が推進し、2015年に米国でスタート。日本でも、がんと向き合う子どもたちにエールを送るため、啓発月間の9月、各地のタワーや観覧車などが照らされ、今年は160カ所以上に上った。
姫路での実施は同市飾磨区の看護師、中野遥さん(38)が市に働きかけて決まった。昨年2月、長男結人ちゃん(当時5歳)を小児がんで亡くしていた。
結人ちゃんが県立こども病院(神戸市中央区)に入院中、待合所にキャンペーンのチラシが貼ってあった。見ると、県内で参加するのは神戸の施設が中心。「いつか姫路城でもできたらいいな」。そう思ったが、愛息との別れでそれどころではなくなった。
年が明け、気力を取り戻すと、姫路市保健所に相談した。城のライトアップには市内での活動などが条件だったため、神戸の支援団体の協力を得て、市内で開かれたマルシェでの小児がん啓発のレモネード販売を企画。日本でのキャンペーンを主導するNPO法人・日本小児がん研究グループ(名古屋市)に寄付する計画で、市の許可が下りた。
中野さんは「お城は姫路のシンボル。『なんでこの色?』という思いから小児がんについて知ってもらえたら」と話している。(有島弘記)