秋にきれいな紅葉を見せてくれていたイチョウやフウ、サクラの木は、すっかり葉を落としてしまっています。寂しい印象ですが、あらわになった樹幹や枝をよく見ると、コケ植物と地衣類が黒や白の模様を描いている様子が観察できます(写真A)。
また、足元では、夏に青々と茂っていた草本が枯れ、地面に生えているコケ植物の鮮やかな緑色が映えて見えるようになります(写真B)。これらのコケ植物は年中を通して観察できる種類がほとんどのため、冬以外の季節では木の葉や花が隠して目立たなかったのでしょう。
夏には水が張られていた田んぼなどでも、土上にハタケゴケ(写真C)やアゼゴケ、ツノゴケ(写真D)などの小さなコケ植物を観察することができます。
コケ植物は、維管束をもたず、花を咲かせずに胞子をつくって繁殖する陸上植物の一群です。コケ植物には、冬に限って枯れるという現象はあまり見られません。むしろ温帯のコケ植物にとっては、冬は寒さから耐え忍ぶ時期ではなく、成長できる時期ともいえるでしょう。
日照時間が短い冬は、花の咲く植物にとって光合成に必要な光が足りません。また、低温のため根による水の吸収効率が著しく低下し、葉から蒸散する水とのつり合いがとれないために落葉します。
一方で、コケ植物は弱い光でも光合成することができる種が多く、陰をつくっていた木や草の葉が落ちることでより多くの光を受けることができるようになります。また、根や維管束を持たないコケ植物は全身で水を吸収することができ、湿ったタイミングで光合成を行います。そのため、1年を通して変わらず観察することができるのです。
秋から春にかけて多くのコケ植物は胞子を飛ばす準備を行っています。コケ植物の群落をよく見ると胞子のう(蒴(さく))を観察することができます(写真E)。この中で多くの胞子を生産しています。
私たちは普段野外で植物を見るとき、地上数十センチの高さや木の枝先に両目の焦点を合わせて花や葉の形を認識しています。
一方で、コケ植物を観察する場合は、地面すれすれの位置や木の幹に焦点を合わせる必要があり、大きな植物を見ているときはコケ植物に焦点は合っていません。
私たちの目は存外に融通が利かず、視界に入っていても焦点が合っていなければ見過ごしてしまいます。冬の時期は、木の葉などが落ちることで、おのずと焦点が合う位置が変化しています。冬は新しい視点で自然を観察できるチャンスなのです。























