兵庫県の元西播磨県民局長が作成した告発文書を調べる県議会調査特別委員会(百条委員会)は6日、斎藤元彦知事と片山安孝元副知事=7月末に辞職=を証人尋問した。県は文書を公益通報として扱わず元県民局長を懲戒処分としたが、斎藤知事は「真実相当性がなく、誹謗(ひぼう)中傷性が高い文書だった」として保護対象でなかったと改めて主張。「県や知事の対応に問題はない」と述べ、専門家が指摘する違法性を否定した。
斎藤知事は3月20日に文書を把握した後、21日に片山氏ら側近4人を呼んで協議したと証言。自らのパワハラ疑惑など告発文書の内容が事実ではないと感じ、作成者や意図などを「徹底的に調べてくれ」と指示したと説明した。
また、文書が公益通報に当たらないと判断した理由として、斎藤知事は「うわさ話を集めて作成した文書に真実相当性はない」などと主張。委員の県議から、公益通報者保護法に告発者の探索を禁止する条文があると問われると、「告発者の探索ではなく、誹謗中傷文書の発信者を探したので問題ない」と反論した。
5日の百条委に招致された奥山俊宏上智大教授に続き、6日に出席した同法に詳しい山口利昭弁護士は、元県民局長への懲戒処分など不利益な扱いを違法と指摘した。これに対し斎藤知事は「解釈が違うが、訴訟になっても耐えられる」と従来の見解を繰り返した。
また、これまでの職員らの尋問で「3月末に総務部長が第三者機関による調査を知事に提案していた」「公益通報の調査結果を待ってから処分すべきと進言した」などの証言があり、斎藤知事はその認識も問われたが、いずれも「記憶にない」などと否定。知事と職員で証言内容の食い違いがみられた。
一方、斎藤知事の最側近で初の尋問だった片山元副知事に対しては、告発文書で疑惑を指摘された立場で元県民局長の聴取を行い、脅しとも取れる発言が問われた。片山元副知事は「選挙で選ばれた知事を公務員が排除しようとしている」として厳しく追及したと認めた。また、文書は不正な行為と捉えていたため、「告発者を守るという認識はなかった」とも明かした。
百条委は10月24、25日の会合で、これまでのパワハラ疑惑と贈答品受領の疑惑以外の項目を調べる予定。斎藤知事を再び尋問する方向で検討する。(金 慶順)