2010年10月に私立高2年の堤将太さん=当時(16)=が刺殺された事件は、最高裁決定で、殺人罪に問われた当時17歳の男(32)に対する懲役18年の実刑が確定する。父の敏さん(66)は「できる限りの判決を下していただいた。当然の決定だが、やっぱりほっとした」と表情を和らげた。
「あぁ長かった」。16日夕、最高裁決定を聞いた敏さんは漏らした。事件から15年余り。家族にとってあまりに苦しい時間だった。
悲しみに沈む家族をよそに、被告の男は各地を転々として逃げ続けた。事件への関与を話していたことも後で分かった。「逮捕までは、家族はずっと後ろを向いてばかりだった」
事件から約11年後に男が逮捕され、23年には裁判が始まった。「なぜ将太が殺されなければならなかったのか」。答えを求め、向かった法廷。対峙(たいじ)した男は遺族と目も合わせず、質問にも正面から答えない。「全く反省していない」。一審判決後は、家族全員が疲労困憊(こんぱい)になっていた。
被告側は控訴、上告して争った。望んだ答えは得られなかったが、その間も支援者や捜査員らが「堤家の味方やから」と見守ってくれた。「将太と、家族の皆で取り組んだ裁判だけど、励ましがあったからここまでこられた」と振り返る。
敏さんは各地で犯罪被害者支援や犯罪抑止の講演活動を続けてきた。自ら語ることのできない将太さんの悔しさ、無念さが原動力だった。「将太、また一緒にやっていこや」。刑事裁判は決着するが、闘いに終わりはない。(竜門和諒)
■堤敏さんのコメント全文は こちら