米国とイスラエルによるイランへの攻撃に端を発し、イラン側の反撃などで中東諸国を巻き込んだ戦闘について、米国とイランは終結に向けた覚書を交わすことで合意したと表明した。19日にスイスで署名式を開いた後、双方による封鎖措置で通航が滞っていた要衝、ホルムズ海峡は速やかに開放される見通しだ。
戦闘は石油価格高騰など世界経済を混乱させ、イランや親イラン民兵組織ヒズボラが拠点を置くレバノンなどで多くの命を奪い、暮らしを破壊した。これ以上被害を拡大させてはならない。双方が合意内容を誠実に履行し、中東の安定化を実現することが重要だ。米国はイスラエルにもレバノンなどへの攻撃をやめるよう最大限の圧力をかけるべきだ。
ただ、条件の細部では双方の見解に相違がある。ホルムズ海峡についてトランプ米大統領は「恒久的に通航料無料となる」と述べたが、イラン側は通過する船舶に安全通航の「サービス料」を課すと主張する。自由航行を阻害することは許されない。双方に歩み寄りを求める。
米とイスラエルが攻撃開始の理由とした核開発の阻止については協議を先送りし、覚書発効後の60日間の交渉で決めるとした。戦闘終結を優先させたのは当然だが、そもそも何のための攻撃だったのかと強い憤りを禁じ得ない。
イランはオバマ米政権時に核合意に至り、兵器開発につながるウラン濃縮の制限や、国際原子力機関の査察を受け入れた。第1次政権時のトランプ氏はこれに異を唱え、一方的に合意を破棄し、経済制裁を復活させた。昨年来、イスラエルとの2度にわたる武力行使でオバマ政権より厳格な核開発制限を目指したが「力による平和」の限界を露呈した。
国際法違反の攻撃は、事態をむしろ悪化させたと言うほかない。
米とイスラエルは緒戦でイランの最高指導者ハメネイ師を爆殺し、反米政権の転覆を目指した。しかし、体制転換どころか対米強硬派が台頭し、国民の反感も高まっているとされる。米などに対抗する抑止力へ、核兵器開発を主張する声がイラン国内で高まることを憂慮する。
トランプ氏は「大義なき戦争」の失敗を率直に認め、核協議は国際社会と協調して行うべきだ。イランとの対立の要因となってきたパレスチナ問題についても極端なイスラエル寄りの姿勢を改め、国連主導による和平を実現せねばならない。
石油輸入の9割以上を中東に依存してきた日本にとってホルムズ海峡の平常化は喫緊の課題だ。戦闘終結後は海峡の自由で安全な航行に資するための機雷除去や復興支援など多方面の貢献を検討する必要がある。
























