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 高市早苗首相の下で初となる経済財政運営の指針「骨太方針」が決定した。楽観的な試算に基づく大盤振る舞いとも言える内容だ。

 「強い経済の構築と財政の持続可能性を一体的に実現する」と首相は強調した。官民で2040年度までに累計370兆円超を投資して経済を成長させ、財政悪化のリスクを抑える道筋を描く。

 官民投資の対象は人工知能(AI)や半導体を筆頭に、サイバーセキュリティー、創薬など17分野の62製品・技術に及ぶ。総花的な上に官民の投資内訳は示されておらず、経済界からは「政府が何に力を入れているのか分からない」と困惑する声が上がる。実際にどれだけの民間投資を引き出せるかは見通せない。

 企業の国内投資を促すために、政府が一定程度の支援をする重要性は否定しない。しかし、先進国の中で最悪水準とされる財政事情を踏まえ、めりはりを付けた支出に努めるべきである。効果を厳しく検証し、分野や規模を絞り込むなどの機動的な対応が求められる。

 政府は巨額投資で高成長を実現させるとしている。国内総生産(GDP)の伸び率は、名目で3%超、物価変動の影響を除いた実質で1%超を目標に据えた。ただ、財政出動と金融緩和によるアベノミクスをはさんだ11~25年度の実質GDPの成長率は、平均約0・8%にとどまる。目標達成のハードルは相当高い。

 骨太方針のもう一つの柱は、単年度主義をとってきた予算編成の転換だ。経済安全保障で特に重要と位置付ける分野は複数年度で財源を確保するほか、各省庁からの予算要求に上限を設けない「『強く豊かな日本』投資枠」を新たに設ける。

 看過できないのは、「財政健全化」の言葉が骨太方針から消えるなどしたため、財政悪化への懸念が市場で広がった点である。

 歴代政権は税収などの基本的な収入で政策支出を賄えるかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を重視してきた。だが高市政権はPBではなく、借金に当たる債務残高をGDP比で引き下げることを目標とした。借金が増えてもGDPがそれ以上に拡大すれば、数値上は「改善した」とみなされる。

 加えて、骨太方針の原案には日銀の追加利上げをけん制するような文言があったことから、財政支出の膨張が警戒され、歴史的な金利上昇や円安を招いた。原案の文言を一部修正したものの、「責任ある積極財政」に向ける市場の視線は厳しい。

 財政健全化の取り組みを後退させてはならない。市場の信認を確保しつつ、成長戦略の効果を最大化することが不可欠だ。