「この子は4カ月の頃から地域の優しい住民に可愛がられ、外と家を行き来しながら自由に暮らしていました」
そう語るのは、地域猫活動を続けてきたボランティアの nekono_sekai さん(@aisuruanimaru)です。
虹の橋を渡ったのは茶トラの猫「金ちゃん」。母猫とともに5年前に現れ、母猫が姿を消したあとも、この場所に住み続けてきました。人懐っこく、顔見知りになると撫でさせてくれる金ちゃんは、地域の人々にとっても小さな家族のような存在でした。
金ちゃんは3年前に捕獲され、去勢手術を受けたあと地域に戻され、住民が協力してお世話を続けていました。
■苦しみながら住民のもとへ戻った最期
悲劇が起きたのは2024年12月。地域の世話人Aさんの家まで必死に戻ってきた金ちゃんは、口呼吸をし、鼻水と泡を吹いて苦しんでいました。家の中に入れて見守るしかできなかったAさんの目の前で、金ちゃんは2時間ほどもがき苦しんだ末、息を引き取りました。
「泣き崩れました。私より、毎日お世話してくれていた住民の方はもっと泣き崩れたと思います」
取材に応じた nekono_sekai さんは、悔しさと無力感を滲ませます。
■同じ場所で相次ぐ「毒餌」被害
金ちゃんが命を落とす少し前から、同じ地域では同様の被害が相次いでいました。
「今年5月、6月にも2匹の猫が毒餌を食べて亡くなっています。亡くなった場所も数十メートルほどの距離。苦しみ方も全く同じでした」
残念ながら、警察への届け出は十分に行われず、証拠も乏しいまま。地域の人々は「同じ犯人が繰り返している」と疑っています。
■「罰が軽すぎる」動物愛護法への疑問
現行の動物愛護法では、動物の遺棄や虐待には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」とされています。
「動物はモノ扱いされているのが現実です。同じ命なのに、痛みも苦しみも恐怖も感じているのに…。刑罰が軽すぎるから、再犯が繰り返されるんです」
nekono_sekai さんは、ポスターを作って地域に掲示し、同じような事件を防ぎたいと考えています。
■地域猫を守るために、今できること
5年前、引っ越してきたときには野良猫が多く、糞尿被害や猫風邪で目が潰れそうな子猫も多くいたといいます。
「可哀想で見ていられなかった」
それが活動の始まりでした。仲間とともにTNR(捕獲して不妊手術をして元の場所に戻す)を進め、地域の人々も理解を示し、猫と人が共存できる環境を築いてきました。しかし今回の事件で、その思いは無残に踏みにじられました。
■「命扱い」にしてほしい--繰り返させないために
「動物は人間と同じ命です。虐待にはもっと重い罰を。物扱いではなく命として扱ってほしい」
nekono_sekai さんはそう訴えます。
地域の協力だけでは限界があります。「ボランティア任せにせず、行政がもっと率先して動いてほしい。地域猫を見守る人を増やし、弱い命を守る大人の責任を考えてほしい」と呼びかけています。
■小さな命の尊厳を守れる地域へ
「元は飼い猫。人間の都合で捨てられ、増え続ける命。人間が生み出した連鎖なら、人間が責任を持つべきです」
金ちゃんの命を奪った犯人が誰であれ、この地域の人たちは小さな命を守り続ける覚悟を新たにしています。
【注意喚起】
地域猫を毒餌や虐待から守るため、地域の見守り体制を見直したり、不審な行為を見かけた際は迷わず警察へ連絡をすることが大切です。同じような悲劇を繰り返さないために、一人ひとりが小さな命を守る意識を持ちましょう。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)