愛犬や愛猫が亡くなると、飼い主の心には大きな穴が開く。うちの子が生まれ変わることを信じてみたり、「姿が見えなくてもそばにいる」と自分に言い聞かせたりしてみても、心が前を向けない日だってある。
だが、そうした心の痛みは、「うちの子が生まれ変わった」と感じられる供養を行うことで、少し和らぐかもしれない。
ペットメモリアルグッズの専門店「ディアペット」(@dearpet.jp)で働く関口さんは、愛犬や愛猫の遺骨が真珠に生まれ変わる「真珠葬」を体験。これまでにないペット供養の形に感動した。
■ブリーダーから迎えた、犬のように人懐っこい愛猫との日々
ウービィー株式会社が行う「真珠葬」は、真珠養殖の専門家によって遺骨をアコヤガイに入れて真珠に生まれ変わらせるという斬新な供養法だ。養殖地は、長崎県の奈留島。遺骨はICチップと共に樹脂コーティングされ、真珠を作る核となる。
樹脂コーティングされた遺骨は、高い真珠養殖技術を持つ専門家によってアコヤガイに託され、1年ほどかけて真珠になる。
関口さんは愛猫わたあめくんを、生後6カ月で亡くした。わたあめくんは、ブリーダーから譲り受けた子。引き取り手がいないことを知り、家族に迎えた。
「私が『わたちゃん!』と呼ぶと走ってきてくれ、『ゴロン!』と言うとゴロンしてくれる、犬のような子でした」
■お迎えから2カ月後に判明した“愛猫の心臓奇形”
お迎えから2カ月ほど経った2016年2月18日、関口さんは衝撃的な事実を知る。検査の結果、わたあめくんには「うっ血性心不全」という先天性の心臓奇形があることが分かった。
「うっ血性心不全」は心臓から血液を送り出す力が弱まり、体内に血液がうまく流れず、滞留(うっ血)してしまう病気だ。猫の心臓病は早期発見が難しく、症状が表に現れる時にはすでに治療が難しいケースが多いが、わたあめくんもそうだった。
関口さんが症状に気づいた時にはすでに胸水が溜まっており、胸水を抜くという対症療法しかできなかったという。
そして、持病が判明した翌日の2月19日、仕事から帰宅した関口さんの目に飛び込んできたのはドアにもたれかかるように倒れ、息絶えたわたあめくんの姿だった。
「私はその日、なんとなく今日が最期だと分かっていて…。朝に家を出た後、1度戻って、わたちゃんに挨拶しました」
わたちゃん、またね。そう伝えると、わたあめくんはたくさん甘えた後、部屋の中に戻り、じっと関口さんを見つめ、会社へ行く姿を見送ってくれたという。
わたあめくんの遺骨を「真珠葬」という形で弔おうと思ったのは、「母なる海に抱かれて真珠として生まれ変わる」というコンセプトに惹かれたからだ。
「真珠の核ひとつひとつにICチップが入れられるので、間違いなく我が子だと分かって安心できました。遺骨が真珠になるまでには1年ほど必要ですが、こちらが不安にならないよう、こまめに連絡をくださり、ありがたかったです」
こうした細やかなサポートのおかげで、関口さんは「今頃は海の中かな」「台風が来ているけど、大丈夫かな」など、まるでわたあめくんが生きているかのように思え、ワクワクしながら真珠の誕生を待てたという。
■愛猫の真珠が誕生!“命が生まれることの尊さ”を心が理解した
真珠葬は現地へ赴いて、アコヤガイに核を入れる時や真珠を取り出す瞬間に立ち会うこともできる。関口さんは実際に奈留島へ行き、自分の手で真珠を取り出した。
「言葉通り、“生まれる”を体感しました。遺骨が何かに変わるという供養法は弊社でも色々とご案内はしていますが、真珠という形に生まれ変わり、誕生する瞬間を見た時、これが本当の“生まれる”だなあと感じました」
真珠葬の費用は500,000円(税込550,000円)と、決して安くはない。関口さんは葬儀費用に加えて、1回15万円ほどの渡航費も費やしたが、「後悔はない」と話す。
「時間や費用など、悩ましいことはあるかもしれませんが、生前と同じようにわが子を案じたり、生まれ変わったことを喜んだりでき、『もう一度、出会えた』と感じられて嬉しかった。こうした喜びからペットロスが癒される方もいると思います」
真珠葬によってできる真珠は色や形がそれぞれ違い、うちの子の個性が感じられるのも魅力だ。真珠に生まれ変わったわたあめくんはこれから先、キラキラと輝きながら、関口さんの日常に寄り添ってくれることだろう。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)
























