5月にまだまだちっちゃいきなこちゃんが、キウイの箱に入って、動物病院に連れて来られました。
5月にまだまだちっちゃいきなこちゃんが、キウイの箱に入って、動物病院に連れて来られました。

空前の猫ブームで、今年生まれて初めて子猫ちゃんを飼われたという方もおられることでしょう。避妊手術はお済みですか?お済みでなければ、年内に済まされることをお勧めいたします。それは何故か?

猫は長日繁殖動物(ちょうじつはんしょくどうぶつ)だからです。この言葉は、主に畜産業界で使う言葉ですが、日照時間が長くなる刺激で発情が来る動物のことを言います。猫以外では、馬、熊、タヌキ、キツネ、などが長日繁殖動物です。つまり、日本では冬至(今年は12月22日)を過ぎた年末から徐々に日が長くなり、その刺激で発情が来ます。

猫の妊娠期間は約2カ月ですから、そのタイミングで交尾をすると、春から夏にかけて子猫たちが生まれます。春から夏は食べものも多く、過ごしやすいので子育てにはもってこいです。よくできていますね。ですから、お年頃の猫チャンを飼われている方、つまり年末の時点で生後数カ月になる猫チャンは、年明けに発情が来る可能性が高いので、早めに避妊手術をすることをお奨めします。

以前、当院に来られた保護猫チャンは、年末だというのに絶賛発情中でした。「おかしいな?まだ日照時間が短いのに…」とは思いましたが、最近保護されたばかりだったので、外にいるときに何かあったのかなくらいにしか考えなかったのですが、飼い主さんが、「保護したばっかりで寂しいだろうと思って部屋のライトを夜通しつけっぱなしにしていました」とおっしゃいました。!!!長時間にわたって部屋のライトが点いていると、お年頃の猫チャンの身体は日が長くなったと認識して直ちに発情が来るのです。お年頃の猫ちゃんを、夜遅くまでライトをつけて明るいお部屋に入れるときは、注意されてくださいね。

さて、発情が来るとどうなるのかですが、それはその猫チャン猫チャンで個体差が出るところです。異性を呼ぶために独特の鳴き声、しかも大声で鳴き叫び、あちこちに細かい霧状の尿をスプレーしてまわります。この時の尿はいつもの尿とはにおいも性質も異なり「私はここに居るわ!彼氏募集中デス(もしくは彼女募集中だぜ!)」といった情報のはいった尿になります。ですから、あちこちにまき散らされることになるのです。駅前でビラをまく感じでしょうか?

去勢していないお年頃の雄猫が近くに複数いる場合、縄張りや女の子の取り合いで喧嘩をすることもあります。女の子は、床に背中を擦り付けて体をくねらせたり、お尻を高く持ち上げて伏せたりと、独特のポーズをとります。ですが、あまりその発情行動が顕著でない子もいます。

ただ、一般的には猫の発情は激しいことが多いですね。そして、彼氏(彼女)を探したい一心で、飼い主さんがうっかり玄関を開けっぱなしにすると外に飛び出してしまい、交通ルールなんてわからないので、交通事故に遭ってしまうといったこともあります。

勤務先の動物病院で長年一緒に仕事をしている後輩は、およそ10年前に初めて自分で猫を飼いました。ある犬の飼い主さんが猫を保護してしまい、「うちには犬がいるので猫は飼えないの。困ったわー。」とおっしゃるのをみて「では、僕が飼います。」とかっこいいところを見せつけました。年が明けたので、私は「あの子は避妊手術しないの?」と聞くと、「まだ小さいしかわいそうやん…」などと自分の猫のこととなると文字通り猫可愛がりして言っていましたが、ある朝、彼はやつれた顔でその猫を連れて出勤してきました。「発情の声がうるさくて、眠れんかったわ。今日、手術するわ。」だって。…「かわいそうとかゆうてたんちゃうんかい!」とは思いました。

それにしても、発情は本能的な行動で自然なことなのですけどね。特に都会にいると発情の大声は飼い主さんの安眠妨害になったりご近所迷惑になりますので、早めに手術することをお勧めいたします。猫チャンも人間に振り回されて大変ですね。

◆小宮 みぎわ 獣医師/滋賀県近江八幡市「キャットクリニック ~犬も診ます~」代表。2003年より動物病院勤務。治療が困難な病気、慢性の病気などに対して、漢方治療や分子栄養学を取り入れた治療が有効な症例を経験し、これらの治療を積極的に行うため2019年4月に開院。慢性病のひとつである循環器病に関して、学会認定医を取得。