2026年秋に登場する近鉄「Les Saveurs 志摩」(近鉄プレスリリースから)
2026年秋に登場する近鉄「Les Saveurs 志摩」(近鉄プレスリリースから)

近鉄は10月31日、南海は11月12日に、新たな観光列車のデビューを発表しました。沿線に多くの観光資源を持つ近鉄と南海には、すでに観光列車が存在します。2026年に登場する観光列車はどのような性格を持つ列車なのでしょうか。近鉄と南海の間に、共通点はあるのでしょうか。

■近鉄と南海の新たな観光列車

近鉄から新たな観光列車「Les Saveurs 志摩(レ・サヴール・しま)」が登場します。登場時期は2026年秋です。運行区間は近鉄名古屋~賢島間で、途中停車駅は伊勢市、宇治山田、五十鈴川、鳥羽、鵜方です。

「Les Saveurs 志摩」のコンセプトは「美食が誘う、優雅な列車旅」。志摩観光ホテル監修の本格的なコース料理「フレンチコース」と、近鉄・都ホテルズ監修の「フレンチ膳」を用意します。

「Les Saveurs 志摩」は4両編成の構成で、1号車・2号車は「フレンチ膳」向け車両、4号車は「フレンチコース」向け車両、3号車はキッチン車両です。1号車・2号車は1人席と2人席を配置。各席には木目調な大きな仕切りがあります。4号車は開放的なテーブル席となり、「フレンチコース」を堪能できる車内レイアウトになっています。

南海では、4月24日に観光列車「GRAN 天空(グラン テンクウ)」が登場します。運行区間は難波~極楽橋間。途中停車駅は、新今宮、天下茶屋、堺東、金剛、河内長野、林間田園都市、橋本、九度山です。「GRAN 天空」は4両で構成され、1号車は「リラックスシート」、2号車は「ワイドビューシート」、4号車は「グランシートおよびグランシートプラス」、3号車はすべての乗客が利用可能な「ロビーラウンジ」です。「リラックスシート」はリクライニングシートが並び、「ワイドビューシート」は車窓を楽しめる座席配置となっています。

4号車は「グランシート」と「グランシートプラス」合わせて16席を用意。最大4人掛けのソファ席が4つあります。「グランシートプラス」では、こだわりのテーブルやソファを用意する、とのことです。

「グランシート」「グランシートプラス」では、食事+フリードリンク付きコースと、ワンドリンク付きコースを用意。食事は沿線にあるレストラン「Genji」が監修します。

なお、「Les Saveurs 志摩」、「GRAN 天空」ともに、既存車両からの改造車です。

■「食事」と個性あふれる客室への需要

近鉄「Les Saveurs 志摩」と南海「GRAN 天空」の共通点は、食事サービスと特色ある客室です。近年、全国的に食事サービス付きの観光列車が増えています。その背景として、観光列車に対し、食事サービスを求める声が大きい点が挙げられます。

2021年5月、交通新聞社運営のサイト「トレたび」に掲載された、ジパング倶楽部会員対象のアンケート調査によると、「今、もっとも乗りたい観光列車は?」という問いに対し、「食事を提供する列車」が1位の39%を占めました。

ジパング倶楽部は、JR6社が運営する満65歳以上を対象とした会員制度であり、最も観光列車の利用ができる層ともいえます。

食事サービスを有する定期列車が少ないこともあり、食事提供は非日常的な列車旅に欠かせない要素とみていいでしょう。

また、2023年8月に「JR釧網本線維持活性化実行委員会」が行った「観光列車に関する調査」の報告書には、興味深い指摘があります。

この報告書にある、「観光列車へのニーズ」の項目では、観光列車に対して、関東圏は「ゆったり感」、関西圏は「特徴ある車両や車内接遇」に着目する傾向が見られる、と指摘されています。

近鉄はメニュー別に車内レイアウトを変え、南海では16席の車内で、差別化を図っています。まさしく、両者とも、特徴ある車両づくりに余念がありません。

このように見ていくと、近鉄「Les Saveurs 志摩」、南海「GRAN 天空」は現代の要求にマッチした、関西私鉄らしい観光列車といえるのではないでしょうか。

(まいどなニュース特約・新田 浩之)