兵庫8区の候補者がそろって政策を訴えた合同の演説会=2日夜、尼崎市内
兵庫8区の候補者がそろって政策を訴えた合同の演説会=2日夜、尼崎市内

 衆院選の投開票が2日後に迫る。兵庫8区(尼崎市)では、公明党が長年「牙城」としてきた地盤からの撤退で、構図は一気に流動化。与党同士がしのぎを削り、そこに割って入る新党は公明票の取り込みが鍵を握る。戦いの最前線を報告する。(金 旻革、小林良多、名倉あかり)

 1日午後、JR尼崎駅前。自民党が30年ぶりに擁立した青山繁晴氏(73)のもとに、党内の保守派として近い有村治子総務会長が駆けつけた。マイクを握ると、すかさず保守の受け皿をアピールした。「自民のともしびを消さずに来られたのは皆さまのおかげだ」

 党県連幹部は青山氏を「三顧の礼」で迎えた。自公連立により自民の空白区だった尼崎で、しかも短期決戦で議席を取るには知名度が欠かせない。地縁のない落下傘候補だが、保守の論客で知られ、これ以上ふさわしい人物はいなかった。

 街頭演説では、寒空の下でも常に人だかりができる。陣営関係者の一人は「聴衆は数十人集まり、多い時は数百人規模になる。こんな光景は見たことがない」と驚く。演説を聞いた市内の男性(76)は「30年も自民候補がいなかったのは不幸。これまでは白票を入れてきた」と歓迎した。

 街頭の盛り上がりとは裏腹に、陣営は上滑りを危惧する。「聴衆には市外の青山ファンが多い。立候補を知らない人も少なくない」

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 「生活者の声をど真ん中に。中野洋昌さんの議席が脅かされている」。中道改革連合の新人弘川欣絵(よしえ)氏(50)は、長年議席を維持してきた公明前職の名前を出して支援を求める。公示日以降、公明支持者の集会をほぼ毎日こなしてきた。

 2024年の前回選で、公明は8区の比例で約3万4千票を獲得。支持母体・創価学会の集票力は県内屈指を誇った。だが、政権離脱と新党結成に伴い、弘川氏を全面的にバックアップする。さながら後継候補のような手厚さだ。

 公明関係者は「(弘川氏の)人権派弁護士の実績はわれわれの支持者の共感を得ている」とみる。公明側が日々のスケジュールなどを管理しているが、短期間で組織に浸透させるのは「集会だけでは困難」(公明議員)と焦りがにじむ。

 公明側には政権交代した09年の選挙で、幹事長を務めた故・冬柴鉄三氏が落下傘候補に惜敗した苦い記憶がある。「尼崎は新しいものを好む傾向がある」(同)と警戒する。

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 前回選で強固な中野氏に約1万票差に迫り、比例復活で初当選した日本維新の会前職の徳安淳子氏(64)。急転直下の立候補となった前回とは違い、有権者と顔を合わせる地道な「どぶ板」の戦いを進めている。

 与党としての選挙で「(政権の)中から解決を推し進めてきた」とアクセル役をアピール。その一方で、「尼崎のことは隅々まで知っている」と訴え、地域に根ざした活動を強調する。

 師と仰ぐ故・室井邦彦参院議員の秘書を経て、県議を5期務めた。市民の困り事を聞く活動は、国会に舞台を移した今も続ける。維新市議は「参加者が少ない地域の行事もこまめに顔を出す。誰でもまねできるものではない」と舌を巻く。

 ただ、県内の地方議員が国民健康保険料支払いを逃れていた「国保逃れ」への批判も根強く残る。先月下旬、市内で行った吉村洋文代表の街頭演説には「従来ほど人が集まらなかった」(維新関係者)といい、追い風がない中での選挙戦は最終盤を迎える。

 共産党新人の板東正恵氏(45)は「消費税を5%に引き下げ、利益を上げている大企業の優遇税制を見直す」と主張。れいわ新選組新人の長谷川羽衣子(ういこ)氏(44)は「企業の負担を軽減するために消費税を廃止し、現金給付で消費を喚起する」と訴えている。

兵庫県内の立候補者一覧