終盤に入った衆院選で、候補者や政党が「推し活」をどう広げるかに力を注いでいる。アイドルやキャラクターの応援で展開されている手法を取り入れ、グッズや交流サイト(SNS)に使いやすい画像などの素材を提供。ファンによる自発的な発信で、選挙期間中にうねりを起こす狙いだ。一方で、「感情先行の盛り上がりでは肝心の政策論が置き去りにされる」と識者は警鐘を鳴らす。
■首相も、中道も、共産も
「かっこいい画像、かわいい加工、政策をわかりやすく解説した図解…。あなたの得意な表現で広めてください」
兵庫県内の新人候補はX(旧ツイッター)で、そう呼びかける。
ネット上に特設ページを開き、「推し活」素材になる候補者の写真や街頭演説の動画などを数時間ごとに配信。陣営は「対立候補を攻撃するような使い方ではなく、ポジティブな『推し』の手法で盛り上がりをつくりたい。とにかく選挙に参加してほしい」と狙いを語る。
現在、SNSで最も目立っているのは「サナ活」だ。高市早苗首相が使っていたペンやバッグなどを身につけて街頭演説に足を運び、その様子を写真付きで投稿する支持者もいる。
新党・中道改革連合も、支持を「推し活」として可視化しようとする。同党の共同代表である野田佳彦氏と斉藤鉄夫氏の2人が語る政見放送の動画が切り取られ、ネット上で「まるで読経」「もはやAI」などと“炎上”。党サポーターのアカウントがこれを逆手に取り、「推し活動画選手権」として「#おじ活」などのハッシュタグ(検索目印)で投稿を呼びかける。
共産党も専用ページでSNS向け素材を公開するなど、各党の支持者の間で、Xのプロフィル欄に「〇〇推し」「推し活中」と記す動きが広がっている。
同じような現象は、2024年の兵庫県知事選でも見られた。街頭演説には写真入りのうちわやそろいのイメージカラーで応援する人たちが集まった。
■政策差の乏しさも要因に
「推し活選挙」が広がる背景は何か。専門家によると、マーケティング手法の浸透だけでなく、SNS時代のファン文化や政党間の政策差の乏しさといった要因があるという。
企業マーケティングに詳しい水越康介・東京都立大教授は「マーケティングでは、機能より信頼感や親しみといった情緒的価値が重視され、政治の『推し活』もその延長にある」と指摘。「政治家がSNSで私生活や素顔を発信すると、有権者は知人のような近さを感じるが、それは思い込みでもある。推しの楽しさはあるが、政党は情緒だけでなく客観的な指標で政策を語る必要がある」と語る。
一方、ファンダム(熱狂的ファン集団)を研究する関西学院大の柳澤田実准教授(哲学)は「SNSで常に『いいね』やシェアを求められる中、深く関わりたい欲求が政治にも向かい、『推し活』的な支持が生まれている。流れは止めにくいが、政党は熱狂に乗るだけでなく、冷静な対話の場を整えるべきだ」と話す。
中央大の山田昌弘教授(家族社会学)は「政党間の政策差が乏しく、誰が勝っても生活は大きく変わらないとの感覚がある。イメージや好き嫌いで投票先を選ぶ傾向が強まり、『推し活』的な支持が結果を左右しつつある」と指摘する。(前川茂之、村上貴浩)






















