2月のプロ野球春季キャンプを前に、スポーツ用品大手ミズノの子会社「ミズノテクニクス波賀工場」(兵庫県宍粟市波賀町安賀)で、選手向けのグラブやミットの生産がピークを迎えている。同工場で生産されたグラブは昨年日本一に輝いた阪神タイガースや、パ・リーグ3連覇を果たしたオリックス・バファローズの選手も愛用。各選手の要望に合わせ、職人たちが一つ一つに思いを込めて手づくりしている。(村上晃宏)
同工場は1970年から稼働し、現在は52人の社員が勤める。ミズノが国内で生産するグラブとミットは全て同工場で作られている。アンバサダー契約を結ぶ日本野球機構(NPB)の57選手のグラブも担う。
昨年12月上旬、次のシーズンに向けてグラブの形や軽さ、頑丈さ、色といった選手の希望を聞き取る会合が大阪市内で開かれた。同工場の担当者によると、近年はしっかり捕球ができるよう大きめのグラブを求める声が多いという。
工場では選手のデータを基に牛革を機械で裁断。ボールを捕るポケット部分などパーツごとの厚さを選手の要望に合わせてミリ単位で整える。選手の希望に応じ、手の挿入部に「謙虚な心」といった言葉の刺しゅうを入れることもある。
ミシンを使ったり、ひもを通したりして各部位をつなぎ合わせると次第に見慣れたグラブの形に。最終工程ではポケット部分がボールになじむよう木づちで何度もたたく。工場内にはミシンの「ダダダ」という音や、木づちで革をたたく「パンパン」という乾いた音が響き渡っていた。
工場長の林康二郎さん(56)は「職人たちは各選手がプレーする姿をイメージしながら仕上げている。選手達に満足してもらえるグラブやミットを完成させたい」と意気込む。