豊富な水量を誇り、古代から流域に集落が発展してきた揖保川。農耕や物資輸送に適した川の周辺では、うすくち醤油(しょうゆ)や手延べそうめんなど、全国ブランドの地場産品が誕生した。その鍵となったのは、「軟水」と呼ばれるミネラル分の少ない水質だ。食品以外にも、工業用水としての需要も大きく、明治期からの日本の経済成長を陰ながら支えたという。地域の発展を担った水を取材した。(西竹唯太朗)
河口から東に約2キロ。甲子園球場17個分という巨大な工場が、家島諸島を臨む海側に広がる。化学メーカー・ダイセルの姫路製造所網干工場(姫路市網干区新在家)。「元々、この場所に工場ができたことにも揖保川が深く関係しています」。同社イノベーション・パークの隅田克彦所長(62)がほほ笑む。
同社は1908年、「日本セルロイド人造絹糸(けんし)」として創業。19年に国内セルロイド8社と合併し「大日本セルロイド」となった。