神戸市会の村野誠一議員(50)=自民党・無所属の会、同市須磨区選出=が市職員に威圧的な言動で要望を繰り返したとして、市側が2023~24年度に少なくとも計5件を「不当要求」とみなしたことが21日、神戸新聞社の情報公開請求で分かった。市が公職者による不当要求を認めるのは初めて。公開された記録によると、村野市議は市職員に意見や要望を伝える際、「お前は信用できない」などと語気を強めていた。
市が外部からの要望や要求を記録するのは、07年に施行されたコンプライアンス(法令順守)条例に基づく。06年に市の事業に対する口利き行為を巡り、市議の親子2人が逮捕された汚職事件を受けて制定された。議員ら公職者や地域団体、企業関係者らの市職員への働きかけを記録する。
■幹部に求めた謝罪や説明
公開された記録や市関係者によると、村野市議は今年2月14日、市が24年度当初予算案で盛り込んだJR須磨駅のバリアフリー化の検討について、市会に内示する前に説明がなかったとして港湾局職員を電話で叱責(しっせき)した。「かねてから私が議会で質問してきたことだから私に事前に教えるべきだ」「お前は信用できない」などと非難した。
3月26日の記録では、担当の港湾局幹部に謝罪や説明を求めて面談。市会対応を担った幹部に「信用してた人間に裏切られたら、当たりきついわな」と告げていた。また、5月10日には神戸空港の民営駐車場の舗装について職員に不満を述べ、「お前は開き直っているのか。私が評判が悪いと言っているのに放置する気か」と迫っていた。
同条例は不当要求行為の定義を、行う義務がないことを行わせる▽職務上知った秘密を漏らすよう求める▽職員の公正な職務の執行を明白に妨げる▽暴力または乱暴な言動など社会的相当性を逸脱する手段で要望する-などとする。
■対応部署がコンプラ条例基づき判断
市によると、要望の記録は年間約3万件程度。市議ら公職者に限ると年間約400~700件程度だが、不当要求とみなした案件は制度が始まった06年度から22年度まで0件だった。不当かどうかを迷うケースは弁護士らでつくる審査会が判断する仕組みだが、市関係者によると、村野市議の不当要求5件は対応した部署がそれぞれ条例に基づいて判断したという。
村野市議は神戸新聞の取材に文書で回答し「詳細を覚えておらず、誰とやりとりをした中での発言か不明だ。発言が都合よく切り取られ、または解釈されて一方的に記録されているのではと感じる」と指摘した。
その上で「当時の発言や要求が不当要求に当たるとは考えていないが、結果的に私の発言が不当要求と記録されたことは不徳の致すところであり、真摯(しんし)に反省し、今後の議員活動に生かしたい」とした。(金 旻革、井沢泰斗)