あの時、もっと強く引き留めていれば-。2004年10月の台風23号で父孝行さん=当時(81)=を亡くした洲本市の時安正明さん(71)は、父を救えなかった悔しさを今もかみしめる。1人暮らしの知人を心配して出かけた父は、ため池の決壊で流された。兵庫県内で26人が亡くなった台風23号災害から20日で20年。肉親や大切な人を失った悲しみは、癒えない。(荻野俊太郎)
04年10月20日の昼ごろ。時安さんの自宅がある同市上内膳では、台風接近で数日前から雨が降り続き、川が増水していた。上流にある二つのため池も満水に近づいていた。
「ちょっと見てくる」。雨風の強まるなか、孝行さんが自宅を出て行こうとした。約1キロ上流で1人暮らしをする高齢女性のことが心配になったようだった。「行ったらあかん」。正明さんはそう言って止めたが、父は車で向かった。
























