養父市大屋町門野の養鶏農場。成鳥に餌を与え、鶏舎を掃除しながら卵を拾い集める女性がいた。カンボジア出身のチュンメン・イムさん(31)=同市八鹿町下網場=だ。
2020年11月、朝来市和田山町の養鶏会社「オーエヌポートリー」に、外国人技能実習生として入社した。一人息子のトリ・チューザーちゃん(5)を育てるシングルマザー。母国で銀行員をしていたが給与が低く、両親のもとに息子を残し、日本で働くことを決意した。同社の役員らがカンボジアに足を運んで面接し、同年1月に採用が決まった。
同社は、食肉用の鶏を飼育するほか、ひなをふ化させるための有精卵(種卵)などを養鶏会社に販売する。社内で使う機材名や業界用語などを、カンボジアの公用語であるクメール語に翻訳した資料がイムさんに渡され、事前に勉強した。来日時は新型コロナウイルス禍と重なり、入国直後はホテルで隔離生活を送るなど、波乱含みのスタートとなった。