大学生の時に、H・アレン・スミスの書いた「いたずらの天才」という本を読んだ。そこには、機知に富んだちゃめっ気たっぷりのいたずらの数々が描かれているのだが、その本を読んでわが意を得たりという気持ちになった。
私自身も数々のいたずらを仕かけてきていた。姫路西高時代には、体育の先生が太いホースで水をまいているところに仲間と行って、ホースの途中を足で踏んで水がピュッ、ピュッと出たり止まったりするのを楽しんだり、男子トイレと女子トイレの札を入れ替えるいたずらも仕かけた。
大学4年生の頃だったと思う。姫路にあるゴルフ場に電話をした。「もしもし、こちら電話局ですが、今から電話管のそうじをします。受話器から、強い風とともにほこりがいっぱい飛び出してきて、汚れた油も出てきます。なので、30分の間、大きなきれか座ぶとんなどで、受話器をキッチリ包み込んでおいてください」
電話を入れた後、様子を見に車で15分ほどのところにあるゴルフ場に向かった。すると受付の受話器が、きれでくるまれ、がんじがらめにひもで縛られていた。私は、知らぬ存ぜぬの体で「これは何をしているんですか?」と聞くと、受付の女性が「今、電話局が電話管のそうじをしているらしく、受話器からほこりや汚れた油が飛び出ると聞いて、きっちり密閉しています」と言う。おかしさをこらえながらも「へえー、そんなことがあるんですか」と知らんぷりしてその場を去った。
その後、ゴルフ場で「電話管のそうじなんて聞いたことがない。誰があんないたずらしたんやろう」という話になったようだ。自白はしなかったが迷惑をかけたことをわびたい。
東京工業大学で助手をしていた時にもあるいたずらをした。石原舜介研究室の助教授の部屋に電話を入れた。「こちらは水道局ですけど、1時間ほどしたら徹底した改修工事に入ります。工事自体は2、3時間で終わる予定ですが、半日ほどは工事の影響で断水状態が続きます。つきましては、バケツなど水をためておける入れ物を用意してじゅうぶんに水をためておいてください」
しばらくして助教授の部屋を訪ねると、案の定バケツやらやかんやらが部屋中いっぱいに置かれていた。「先生、どうしたんですか?」と聞くと、「水道局から連絡があって修繕工事で半日ほど断水になるらしいから、ためるだけためておいたんだ」と言う。「半日でこんなに水を使うんですか?」と、ここでも笑いをこらえながら、いたずらの成功を楽しんだ。
今から考えるとたちの悪いいたずらであり、反省しているが、そういうことが許されたおおらかな時代でもあった。人生を豊かにするために笑いは大切な要素である。いたずら心から派生するアイデアは頭を柔らかくする発想法としても役立つ場合もあると思う。私は、今でもよくいたずらを思いつくが、周りへの迷惑を配慮してがまんしている。
(いわみ・としかつ=前姫路市長)