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平尾誠二さん特集

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 長年、日本ラグビーを牽引(けんいん)してきた神戸製鋼の平尾誠二氏の訃報が届いた。53歳、あまりに早すぎる。

 豊かな経験と発想には誰もが一目置いた。ラグビーのワールドカップ(W杯)と東京五輪・パラリンピックに向け、日本で最も必要とされる人物の一人だったといえよう。

 京都・伏見工高で全国大会優勝、同志社大では史上初の全国大学選手権3連覇を達成した。日本選手権で対戦した新日鉄釜石(当時)を率いる松尾雄治さんと同志社大の平尾さんというスター同士のプレーは、今もファンに語り継がれている。

 神戸製鋼所に入社後、チームを日本選手権7連覇に導いた。日本代表の主将と監督、神戸製鋼総監督などの経歴は「ミスターラグビー」の呼称にふさわしい。

 魅力はプレーにとどまらない。この人が語ると荒々しいイメージのラグビーが、知性と判断力を競うスポーツでもあると気づかされる。

 「球を獲得することは自由を手に入れること。周囲を俯瞰(ふかん)しながら何をすべきかを瞬時に判断し、奔放なプレーを繰り出す。成熟した個が素晴らしいプレーを生むのです」

 自在な思考は卓越した組織論、リーダー論に広がった。プレーはもちろんのこと、あの語りをもう聞けないのかと思うと残念でならない。

 阪神・淡路大震災の揺れに見舞われたのは、日本選手権7連覇の2日後のことだった。この経験が平尾さんに新しい視座を与えたといえる。それは「地域」だった。

 2001年に発起人の一人となって設立したNPO法人の名称に、平尾さんの精神が表れる。「スポーツ・コミュニティ・アンド・インテリジェンス機構」。スポーツと地域と知性。欧州のように、住民がそれぞれの楽しみ方でスポーツに接する機会を増やすことが、地域社会の再生、子育てや生活の質の向上につながると説いた。

 活動が被災地復興、さらに未来に向けた地域づくりに一つの方向性を示したことは間違いない。

 地元の神戸はラグビーW杯の開催地の一つだ。神戸という地域の魅力は、独自性は何なのか。それを見つけ、発信しなければと説いた。

 ラグビー界に地域に、平尾さんのメッセージは託された。幸いなことに人材は育っている。ともにその遺志を継いでいきたい。

2016/10/21
 

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