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平尾誠二さん特集

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スターとは、まばゆいばかりの輝きとぬくもりを持ち、時に流れ星のごとくはかない◆その人にも悲しい宿命を背負わせたのだとしたら、神さまはあまりに酷である。ほれぼれとする端正なマスクに、鋭く華麗なステップ。「ミスター・ラグビー」と呼ばれた平尾誠二さんがきのう、53歳の若さで亡くなった◆まぎれもないスターだった。チームの司令塔として神戸製鋼を率い、7連覇を成した。高校では、大学では、引退後は、とその華々しいラグビー人生を記すなら、ページはいくらあっても足りない。人々はそれを語って、悲しみに暮れている◆“らしさ”を表すのに欠かせぬ話を、スポーツライターの玉木正之さんが短編「彼らの楕円(だえん)球」に書いている。どちらのキックで試合を始めるかを決めるジャンケンで、平尾さんは必ずグーを出した。つまり相手はパーで勝てる。その出方で敵の作戦を読んだという◆ある日、向こうもグーを出し続けた。何十回とあいこになって審判は怒った。根負けしてパーを出した相手に、グーの平尾さんは言ったそうだ。「目の前の10円を拾うようでは、試合には勝てんぞ」◆現役を引退してずいぶん後、神戸・北野のバーでグラスを傾けるその人を見た。暗がりに溶けながら、なおその背から放つ光は鋭くも華やかで、優しかった。2016・10・21

2016/10/21
 

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