福祉職も悩みは尽きません※画像はイメージです(buritora/stock.adobe.com/)
福祉職も悩みは尽きません※画像はイメージです(buritora/stock.adobe.com/)

「30代女性です。5年前に介護支援専門員(ケアマネジャー)になり、知人が運営している居宅介護支援事業所で働き始めました。“利用者様やご家族様の役に立ちたい!”と思い業務にあたっていたのですが、担当するケースが複雑になり書類業務も増え時間に追われる毎日を送るようになってから、だんだん朝起きるのが億劫になり好きだったはずの仕事にも喜びを感じなくなってしまいました」

このように、「誰かのために」と一生懸命に働いていた人が、ある日突然、無気力に襲われ仕事へのやる気を失った状態を「バーンアウト」と言います。

■バーンアウトとは?

バーンアウトとは、専門職に多く見られる、仕事への熱意や意欲が失われ、心身ともに疲弊しきってしまう状態を指します。特に、医療職や福祉職など対人援助職のように感情労働が求められる分野では、利用者の感情に深く関わることで精神的疲労が蓄積しやすく、バーンアウトのリスクが高いとされています。具体的には、以下のような症状が現れます。

▽情緒的消耗感(Emotional Exhaustion)

「仕事に行くのが億劫になる」「朝ベッドから起き上がれない」「心にゆとりがなくなり、些細なことでイライラする」などのように、身体的な疲労というよりも精神的な疲労が特徴です。仕事を通じて情緒的に力を出し尽くし、消耗しきった状態のことです。

▽脱人格化(Depersonalization)

「人に対して共感や思いやりを持てなくなる」「機械的に業務をこなして、人間らしい交流を避けるようになる」「皮肉を言ったり常に批判的な態度をとったりする」などの行動が現れます。精神的なエネルギーを使い果たしてしまい、これ以上の消耗を防ぐための防御反応と考えられています。

▽個人的達成感の低下(Reduced Personal Accomplishment)

「仕事で成果が出ても喜びを感じられない」「自信を失い、自己評価がとても下がる」「努力しても仕方がないと感じて、やる気が著しく下がる」などのように、仕事に対する有能感や達成感が感じられなくなる状態です。

■バーンアウトになってしまったら…

バーンアウトに陥ってしまった時、心身の回復のためにできるだけ早めの対処が必要となります。

▽適切な休息の確保

最も重要なのは、できるだけ早く仕事から離れて心身を休ませることです。まとまった日数の有給休暇の取得や、必要であれば休職を検討しましょう。そのためには心療内科や精神科受診も視野に入れて下さい。

規則正しい生活リズムを意識し、ご自身の状態に併せて「何もしないこと」も有効ですし、仕事から心を離れさせるような、リラックスできる活動を習慣的に行うこともいいでしょう。

▽サポートシステムの活用

勤務先の労務管理者や産業保健スタッフに相談するのも有効です。

産業保健スタッフとは、産業医・産業保健師(産業看護師)・産業カウンセラーなどです。小さな職場では在籍していないこともありますし、EAP(従業員支援プログラム)サービスを外部委託している職場もありますので、一度確認してみて下さい。

▽自己認識と受容

仕事に対して一生懸命である人ほど「休息を取ることに対する罪悪感」を感じる人が多いようです。まずはご自身が「疲れている」ということを認識し、客観的に「仕事ができる状態ではない」と受け入れることが必要かもしれません。

■支える人も、支えられる人も健康で楽しく過ごせるように

バーンアウトは、ご自身の性格傾向だけでなく働き方や職場環境にも原因がある場合があります。自分自身の業務範囲を明確化し、上司や同僚と確認し合ったりして、仕事とプライベートの境界線を設定することも必要でしょう。

また、対人の仕事であるからこそ完璧を求めないようにしたり、自分にあったストレス解消法を見つけ日々のメンタルケアを継続したりと、バーンアウトしないよう意識して行動することも有効だと思われます。

バーンアウトは誰にでも起こり得る状態ですが、セルフケアや働く環境の改善をし、お互いを助け合う文化を醸成することで、支える人も支えられる人も心身ともに健やかでいられる福祉の現場を作っていきたいですね。

【監修】阿部里美(あべ・さとみ)社会福祉士・宅地建物取引士 B型作業所「ぺんぎんクリエイツ」にて職業指導員として、福祉の現場に立ちながらディレクションを行う。地域福祉やまちづくりの分野においても実務経験を有する。異色の経歴として、インタビュー専門ライター、現代美術館にて英語・韓国語を用いたギャラリーガイドなど。

(まいどなニュース/もくもくライターズ)