「【目が見えない犬を捨てる】どんな気持ちでそれができるの」
そんな言葉とともに投稿された1本の動画が、Instagramで大きな反響を呼んでいる。
投稿者は、個性的な保護猫たちとの暮らしを発信している、たいしおさん(@taisio5362)。動画には、2011年に家族として迎え、すでに亡くなったミニチュアダックス「ジョン」くんへの深い愛情が綴られていた。
公園で“ぐるぐる”とさまよう1匹の犬
2011年、小学生だった子どもたちが「公園で犬がさまよっている」と知らせてきたことが、すべての始まりだった。
たいしおさんはその時の光景を、今も鮮明に覚えているという。
「濡れて、身体も汚れて、目が見えないのに必死で走り回っていました。圧倒的な恐怖に包まれているようでした」
そのまま道路に飛び出しそうになっていたため、迷わず抱きかかえ、公園の管理事務所へ。しかし、そこにはすでに保健所職員がケージを持って到着していた。
「渡したら殺されてしまう、と咄嗟に思いました。『私が連れて帰ります!』とお願いして所有権をもらいました」
警察や病院で迷い犬の確認を行ったが、手がかりはゼロ。“捨てられたのだろう”と悟り、たいしおさんはジョンくんを家族として迎えることを決めた。
■心を閉ざしていたジョンが“家族になった瞬間”
保護当初、ジョンくんはおとなしかったが、2週間ほど経つとほえる・かむなどの行動が目立つように。
「病院では『安心して自我が出てきたのだろう』と言われました。トレーナーさんにも相談しながら、その子に合った接し方を学びました」
そして、ある日。
「目が見えないのに、私を探して寄り添ってくれたんです。そっと手を舐めてくれて…心を開いてくれた瞬間でした」
言葉も覚え、「おやつ!」と言うと前足で足踏みして喜ぶ…。ジョンくんは家族の一員として、少しずつ確かな信頼を見せてくれた。
■最期のときまで、“まっすぐに生きる姿”だった
心臓が弱かったジョンくんは、晩年になると散歩を控えるよう獣医に言われていた。
「家の周りをゆっくり歩くだけですが、外の空気を吸って気持ちよさそうでした。りんごが大好きで、切る音がすると足踏みして喜ぶ姿が本当にかわいかった」
そして天国へ旅立った日。ジョンくんは最期まで家族を信じ、愛され続けていた。
■「捨てられる現実を知ってほしい」
投稿には、想いを込めた言葉が並ぶ。
「捨てられるまで、どんな生き方をしたのか…考えるとまだ辛いです。今度は最初から私のところに来てね」
今回の投稿で最も伝えたかったのは、動物を取り巻く現実だ。
「身勝手な人間に振り回されるのはいつも弱い存在です。‘迷子の子どもなら放っておかないはず…同じ命として見てほしい。保護が難しくても、団体や誰かにつないであげてほしい」
また、"かわいい子犬・子猫" だけでなく、高齢や病気の動物を迎える選択肢も広がってほしい と話す。
「病気の子も、高齢の子も、本当にかわいいんです」
■SNSでは「涙が止まらない」「救われた子だ」の声
動画には多くのコメントが寄せられた。
「盲目で外に放すなんて…悲しいけれど、この家族に出会えて良かった」
「最後は愛されて幸せだったね」
「人の温かさに涙が出た」
12年前、公園でひとり震えていたジョンくん。その小さな命に手を伸ばしたことで、1匹の犬は再び“人を信じる”ことができた。
そしてたいしおさんは言う。
「また必ず会おうね、ジョン」
その言葉に込められた深い絆は、今も多くの人の胸を打っている。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)
























