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海外からの研修参加者に、自主防災の大切さを語る大津暢人さん=神戸市中央区脇浜海岸通1、JICA関西
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海外からの研修参加者に、自主防災の大切さを語る大津暢人さん=神戸市中央区脇浜海岸通1、JICA関西

 阪神・淡路大震災で隣人を助けられなかったことを悔やみ、神戸市消防局に入った男性が、発展途上国に神戸の自主防災組織「防災福祉コミュニティ(防コミ)」の活動を広めている。大災害では公的支援に限界があり、住民同士の助け合いが生死を分ける。神戸発の防コミが「BOKOMI」として世界に伝わる。(上田勇紀)

 神戸市消防局予防課の大津暢人(のぶひと)さん(34)。祖父母が住む同市灘区灘南通の古い木造2階建て三軒長屋は、震災で全壊した。当時高校1年の大津さんは、近くのマンションからすぐに駆けつけた。

 祖父母は無事だったが、同じ長屋の高齢男性が生き埋めになった。近所の人が2階部分の畳をはいで救出しようとしたが、姿が見えない。大津さんも手伝おうとしたが、「消防を待つんや」。男性の息子が遮った。

 みんなが手を止めて待った。だが、このとき、あちこちで助けを待つ人がいた。消防は来ず、聞こえていた声はいつしか途絶えた。

 1年後、震災シンポジウムに参加し、火が迫る長田区の鷹取商店街で救助に奔走した消防団員の体験を聞き、心が揺さぶられた。

 「自分がじっとしている間に、この人は何人も助け出した。できることがあったはず」

 市民の防災を育てたい、との思いから2002年4月に神戸市消防局に入った。昨春、予防課に配属され、防コミの担当に。JICA(国際協力機構)関西(神戸市中央区)と共同で行う「コミュニティ防災コース」の講師にも就任した。

 これまでにアジアや中南米など23カ国68人の公務員や大学職員らが、同コースを受講。10年12月、同市消防局と現地の大学などが協力し、インドネシアのジョクジャカルタ市バッドラン地区(約350世帯)に海外初の「BOKOMI」ができた。5700人以上が亡くなった06年5月のジャワ島中部地震を教訓に、住民主体の防災訓練が続く。

 「発展途上国の多くは、財政的な余裕がなければ防災はできないと思っている」。研修でバケツリレーや毛布を使った担架作りを伝え、そうした懸念を取り除く。今秋、チリの国家公務員は結成を約束して帰った。

 「BOKOMIを世界の共通語に」。そう願う大津さんは、海外の受講者に呼び掛ける。「支援を待ってはいけない。自ら動き、命を救ってほしい」

 【防災福祉コミュニティ】 おおむね小学校区単位で自治会や婦人会、PTAや消防団などの住民団体が集まって構成され、防災訓練や防犯活動を行う。阪神・淡路大震災を教訓に、神戸市内で結成が進み、同市内に191ある。全国では自治会単位の自主防災組織が多い。

2013/12/23
 

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