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復興、学生ら撮り継ぐ 定点撮影した女性の足跡たどる

2014/01/08 16:36

 阪神・淡路大震災で神戸市東灘区森南町の自宅が全壊し、復興の過程を定点観測で撮影し続けた故大仁(だいに)節子さん。昨年夏、立命館大の学生らが歩いて撮影地点を探し出し、シャッターを切った。被災経験のない若い世代が、撮影を通じてあの日に近づいた。(上田勇紀)

 人と防災未来センター(神戸市中央区)で「いま、撮影する阪神・淡路大震災」として、大仁さんと学生の写真計141点が展示されている。

 企画したのは同センター震災資料専門員の高森順子さん(29)。大仁さんの自費出版写真集を知ったのがきっかけだった。震災直後の神戸の街並みと、2~5年後に同じ地点で撮影した街並みが対比して見て取れた。

 「同じ手法で震災を伝えられないか」。交流があった立命館大の山口洋典准教授に協力を依頼。昨年8月、学生10人と一緒に、大仁さんの写真集に登場する神戸市中央区と東灘区森南町を歩いた。

 大仁さんが撮影していたのは49地点。当時の地図や聞き込みを頼りに、同じ場所を探した。森南町の6地点を除き、43地点を見つけ出せた。JR三ノ宮駅前などの有名スポットだけでなく、地元の人しか知らないようなビルや街角が多くあった。

 立命館大3回生の山本晃寛さん(22)=大阪府寝屋川市=は「震災の記憶はほとんどないが、撮影するうちに大仁さんの歩みを追体験できた」と振り返った。

 震災で全壊した自宅が解体されるのが忍びなく、使い切りカメラで撮影を始めたという大仁さん。2004年の神戸新聞社の取材に「やり場のない被災者の怒りや悲しみを忘れないでほしい」と語っていた。高森さんが調べたところ、10年に86歳で亡くなっていた。

 「当事者がいなくても震災を伝えられる。定点観測に大きな可能性を感じた」と高森さん。今回の地点は地図に落とし、継続撮影できるようにしている。展示は3月2日まで。入館料(一般600円)が必要。

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