阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた西宮、芦屋市で、震災以前から住所をまったく移動させていない住民の割合が、全人口の2割にとどまることが分かった。被災者の転出や復興住宅への転居、高齢化に加え、マンション建設など住宅開発が進んだためとみられる。19年で地域住民が大きく入れ替わっており、両市は「あらためて防災意識を高めたい」としている。(松本大輔)
西宮市によると、昨年11月末現在、市の人口は47万6283人(外国人除く)。このうち、震災発生前日の1995年1月16日以前から、市内外を問わず住所地が変わっていない住民は9万7392人で20・4%。同様に、芦屋市は人口9万5287人(外国人除く)に対し1万9221人で20・2%だった。
同じく被災地の神戸市は昨年11月1日現在、震災前から居住地が同じ住民は全人口の33%だった。
西宮、芦屋市は震災で深刻な被害を受けた。芦屋市の全半壊率は約5割。震災後は市外への転出が続き、一時は約2千世帯、約6千人減少した。
しかし、復興が進むにつれ人口は年々増加。西宮市は2000年、芦屋市は01年に震災前の水準に戻り、現在は上回っている。
また、芦屋市の新設住宅着工数は01年から10年間で計8377戸、市域1平方キロ当たり453・5戸。西宮市は同様に412・4戸で、いずれも神戸市の225・2戸より多い。住宅地としての人気の高さや開発ラッシュが転入増や市内移動につながっているとみられる。
芦屋市防災安全課は「市内転居や再転入の住民もいるため、震災経験者の割合はもう少し高いと考えているが、次代への引き継ぎは課題。災害に備え、コミュニティーを築いていけるようにしたい」としている。
◇再開発で都市化加速
越山健治・関西大准教授(都市防災)の話 近年、国勢調査における居住年数「20年以上」の人口割合は30%。西宮、芦屋は10ポイント低いことになり、流動性が高い。震災後の再開発、区画整理事業は都市化を加速させた。土地の価値が高まったことで市場が流動化し、企業などによるマンション建設、ミニ宅地開発が進んだ。新住民が増えることによって、従来のコミュニティーが成立しにくくなっていることは否めず、行政の支援も必要だ。