記事特集
発生から3年が近づく東日本大震災の被災地から、神戸市中央区の東遊園地を初めて訪れた遺族がいた。「19年は、長かったですか」。竹灯籠を囲む人々に、心の中で問いかけた。かばんから2枚の遺影を取り出し、明かりに照らす。少しでも前を向きたい-。必死で涙をこらえた。
宮城県名取市の会社員木皿俊克(としかつ)さん(57)。東日本の津波で妻典子さん=当時(50)=を亡くした。自宅は壊滅的な被害を受けた沿岸部の閖上(ゆりあげ)地区にあった。典子さんは娘たちを心配し、勤務先から車で自宅へ戻る途中に津波にのまれた。
7日後。遺体安置所で対面した。幼いころからのやけどの痕が決め手になり、引き取った。
会社の同僚だった。結婚したのは1985年。社のテニス部で仲良くなり、優しさにひかれた。東日本大震災前年の2010年10月6日に結婚25周年。子どもたちが作ってくれたケーキを家族みんなで食べた。
そんな何げない幸せを津波が奪った。2年10カ月がたつ。「長いような短いような…。何とも言えない。しばらくは女房が亡くなったことを信じられず、夢の世界と思っていたから」
昨年1月には長男康之さん=当時(27)=が逝った。長女(23)と次女(21)は仙台市で暮らし、俊克さんは名取市内陸部の仮設住宅に入った。
典子さんにまかせていた家事を、一つ一つ覚えた。できるだけ自炊を心掛けるが、なかなか上達しない。そんな暮らしの中、兵庫県からボランティアが何度も来てくれた。阪神・淡路大震災を経験した人たちと話すうち、19年の道のりを知りたいと思った。
17日午前5時。名取市から訪れた13人と、東遊園地に入った。竹灯籠の前にしゃがみ込むと、典子さんと康之さんの遺影を掲げた。「二つの震災の犠牲者の冥福を祈った。地震と津波で災害は違うけど、同じ悲しみを感じた」。5時46分。目を閉じた。
黙とうを終えると、俊克さんの表情がほんの少しだけ、ゆるんだ。「心の整理はついてない。けれど、少しずつでも前向きに生きることが、生きている者ができる恩返し」
その思いを新たに、日々がまた始まる。
(上田勇紀)
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