洲本市の有形文化財に指定された善光寺の阿弥陀如来立像=洲本市五色町鳥飼浦
洲本市の有形文化財に指定された善光寺の阿弥陀如来立像=洲本市五色町鳥飼浦

 洲本市教育委員会(兵庫県洲本市)は、同市五色町鳥飼浦の善光寺が所有する阿弥陀如来立像を新たに市の有形文化財に指定すると発表した。長野市の善光寺に由来する「善光寺式阿弥陀」の一つで、西日本では少ない上、同じ鎌倉時代後期に制作された像は珍しいことから、貴重と評価した。市文化財審議委員会などを経て16日に正式に指定される。

 市教委や同寺によると、同寺は長野の善光寺の分院として1240年代に創建されたとされる。淡路島内では、同寺の分院として唯一現存している。

 阿弥陀如来立像は高さ約50センチ。右手は指を伸ばし、手のひらを前に向けて胸の前に上げ、左手は人さし指と中指を伸ばして下げている-という善光寺式阿弥陀の特徴を備える。同型の像は全国で約200体あるが西日本には少ない。

 青銅で鋳造されて金メッキが施され、内部に木材がはめ込まれている。長野・善光寺の本尊と同じ形だという。

 制作者は不明。島内最古級の歴史書「淡国通記」には、長野・善光寺の像を模した16体の一つという説やインドから渡来した像だという説が記されている。

 像と像を置く厨子は2022年6月に解体修理された。それに合わせ、写真を撮って県立歴史博物館(姫路市)元学芸員で仏像研究者の神戸佳文さんに見せたところ、価値が分かった。

 市教委は「銅鋳造の阿弥陀如来像は市内では珍しい。さらに、近隣寺院の本尊のほとんどは江戸時代に造られており、鎌倉時代後期のものは貴重」とした。

 像は非公開で、7年に1回一般公開される。同寺は長野・善光寺に公開時期を合わせているが、新型コロナウイルスの影響で公開が遅れた年もあり、次回は未定。住職の阿形国明さん(52)は「指定は光栄。肩書があれば守る形も変わる。地域の人と丁寧に守っていきたい」と話した。(荻野俊太郎)