兵庫県内の2023年の特殊詐欺被害が、過去最多のペースで増えている。…と聞いても「なぜそんなにだまされるの?」と思う人が多いのでは。実はその「心の隙」こそが狙われていた-。犯罪心理学と最新の人工知能(AI)を駆使して被害を疑似体験できる訓練ツールを、兵庫県尼崎市と富士通、東洋大の共同研究チームが開発した。チームが着目したのは「だまされる側の心理」。担当者は「自分の弱点に気付き、対策に役立ててもらえたら」と話している。(広畑千春)
■巧みなたたみかけ
「現在お使いの電話番号で未納料金が発生しており法的措置へ移行します。オペレーターへおつなぎする場合は9を押してください」。受話器から自動音声が流れてきた。押すと「ご本人さま確認のため、お名前、生年月日をお願いできますでしょうか」。つい答えそうになるが、東洋大の桐生正幸教授(犯罪心理学)は「個人情報を告げてしまうのは、被害の入り口」と警鐘を鳴らす。