兵庫県議会の松井重樹議員(自民党会派を除名、たつの市・揖保郡選出)が、政務活動費(政活費)で不適切な処理があったとして議員辞職した。
松井氏は公開対象の2020~24年度の収支報告書で、翌朝に県職員による「レクチャー」を受けるため、神戸市中央区のホテルに前泊したと繰り返し記載していた。だが実際には職員と面会していない日があり、松井氏は「全てを説明できない」として5年間に前泊した100泊超の宿泊費や交通費の全額約180万円を返還する意向を示した。返還額は今後、自民会派が精査するというが、たとえ全額返納したとしても県民の不信感は拭えない。
19年度以前に同様の支出があったかどうかについても「ある意味、いつからでもそうだった」と話している。不透明な支出について説明責任を果たせない以上、議員を続ける資格はない。辞職は当然だ。
山口晋平議長は他の議員にも不適切な前泊がないか、過去2年分をさかのぼって調べるよう各会派に指示した。前泊にとどまらず、全議員の政活費の使用実態を調査しなければ、県民の信頼は取り戻せまい。
兵庫県議会では14年6月に野々村竜太郎元県議が300回以上の「不自然な日帰り出張」を繰り返し、交通費約300万円を政活費から不正に支出していた問題が発覚した。
それを受け、同年10月には交付額を減額する条例を改正した。手引も見直し、領収書はコピーではなく原本の提出を義務づけた。県からの支給は会派一括で受け、議員への支払いも「前払い」から「精算後の後払い」に変更した。収支報告書や会計帳簿、領収書などを県議会のホームページで公開し透明性も高めた。
県民の目にさらすことで議員の自制を促し、不正や灰色の運用を防ぐ全国でも先進的な改革を進めてきたが、自浄作用は機能しなかった。松井氏が提出した領収書などの書類は外形的に問題がなかったといい、議員の自覚に任せるだけで不正を根絶するのは難しい。
政活費を巡っては富山県議会や神戸市議会、尼崎市議会など各地の議会で使途の不透明さが問題視され、その都度見直しが図られてきた。それでも、政務活動の定義のあいまいさなど、根底にある問題は解消されないままだ。何に使い、どのような支出効果があったのか。議会としてどこまでチェックできていたかも厳しく問われている。
政活費は議会活動の活性化を目的に公金を支出する制度だ。規定の厳格化にとどまらず、その意義を根本から問う必要がある。真摯(しんし)に向き合わない限り、再発防止の道はない。