いのちをめぐる物語
高齢化に伴う多死社会を迎えつつある中、住み慣れた地域で最期を迎えることができる施設が各地で開設されている。がんや認知症の患者らがスタッフとともに暮らす「ホームホスピス」や、たんの吸引や胃ろうの管理といった医療ケアが必要な患者を支援する「看護小規模多機能型居宅介護事業所」(看多機)などの施設だ。兵庫県内には、全国ホームホスピス協会(宮崎市)に登録するホームホスピスが12軒あり、全都道府県で最も多い。看多機も県内に30施設あり、この2年間で倍増している。
ホームホスピスも看多機も、積極的な延命を拒む入所者が緩和ケアなどで穏やかな死を迎える「みとり」を手掛ける。
ホームホスピスは空き家となった民家などを活用。がんや認知症で1人暮らしが困難になったり、入院や施設への入所を望まなかったりする人たちが、サポートのスタッフと一緒に家族のように生活する。介護認定を受けていなくても利用できる。
全国ホームホスピス協会によると、全国第1号は宮崎市の「かあさんの家」で2004年にオープンした。現在では各地で44団体が計57軒を運営する。兵庫県内では神戸や姫路、洲本など6市で全国最多の12軒が開設されている。
同協会事務局長の黒岩雄二さん(55)は「兵庫で数が多いのは、阪神・淡路大震災を経験し、地域で助け合う意識が高いのかもしれない」と推測する。
一方、看多機は介護保険のサービスで、医療ケアが必要な人を看護と介護一体で支える。要介護者が日中を過ごしたり宿泊したりするほか、看護師や介護士が自宅を訪問して在宅療養を支援する。
兵庫県によると、神戸やたつの、豊岡市など9市で計30施設を数え、昨年度は1年間で9施設増えた。全国では511施設(今年1月時点)で、昨年の同時期と比べると92施設も増えている。
兵庫県では昨年、初めて全41市町で死亡者数が出生数を上回った。県高齢政策課の担当者は「自宅で生活しながら利用できる看多機のニーズは今後、高まるのではないか。ホームホスピスを含め、人生の最期を迎える場所の選択肢が増えることは大切だ」と話している。(田中宏樹)
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