いのちをめぐる物語
神戸新聞社は死生観やみとりに関するアンケートを実施し、結果の一部を11~13日の本紙に掲載した。65歳以上の高年世代では、半数以上が自宅での死を希望する一方、そのうち約6割は実現は難しいと回答。また、各世代とも9割前後の人が、死の迫った状態での人工呼吸器などによる延命治療を望まないと考え、生活の質を重視する傾向もうかがえた。では、具体的にみとりは誰が担うのか。また、穏やかな最期に向け、気持ちの支えとなるものごとは何か。回答者がつづった、自身の死生観に影響を与えた出来事とともに紹介する。(田中宏樹、段 貴則)
■介護の主な担い手/女性は夫をあてにせず
家族内で介護やみとりが必要となった際の担い手を、中年世代(40~64歳)と若年世代(39歳以下)に質問。男女で傾向が分かれた。介護に直面することが多い中年世代(回答数女性265人、男性115人)では、女性の8割近くが「自分自身」と回答し、「夫」は1割弱にとどまった。男性で「自分自身」としたのは約4割で「妻」は3割強だった。
若年世代(同女性62人、男性29人)では、「自分自身」としたのは女性が6割弱、男性は約3割で「親」と並んだ。女性も「親」が約2割で続いた。配偶者を選んだのは、男性が4人、女性は2人だけだった。
■最期に頼れる人/「みとりは配偶者に」最多
高年世代(回答数268人)には、最期を迎えるとしたら誰が一番頼りになるかを尋ねた。「配偶者」が46%、「子ども」が40%を占め、生活を共にしてきた家族を最も頼りにする傾向が顕著だった。
ほかに「医者や看護師、介護ヘルパー」が6%、「きょうだい」「それ以外の親族」はそれぞれ2%だった。「友人」「近所の人」を選択した人はいなかった。
■気持ちを支えるもの/役に立たない「名誉や功績」
最期が近づいたとしたら何が気持ちを支えてくれるかを高年世代に複数回答で問うと、73%が「家族など親しい人の存在」を選んだ。30%が「充実したり楽しかったりした思い出」を挙げ、「趣味など好きなもの」は27%、「医療や介護体制の充実」が20%で続いた。
「哲学や人生観」「信仰」を選択した人は少数で、それぞれ12%、8%だった。「名誉や功績」を選んだのは1人だけだった。
◇ ◇
<アンケートの方法>
アンケートは、高年(65歳以上)▽中年(40~64歳)▽若年(39歳以下)-に分けて10~11月に実施。神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」や読者クラブ「ミントクラブ」、紙上などで協力を呼び掛けてインターネット上で行ったほか、高年世代の一部は、地域の健康講座受講者らに用紙を配布。計739人から回答を得た。
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