いのちをめぐる物語
未婚や離婚、きょうだいがいないなどの理由で、一人で親の介護を担う「シングル介護」の増加が課題になっている。一人で抱えるあまり心身を病んでしまったり、経済的に追い詰められたり。仕事との両立に悩むケースも多い。そんな中、兵庫県宝塚市には全国的にも珍しいという「シングル介護者の会」があり、悩みを語ったり、情報を共有したりしている。(中島摩子)
増加の一因となっているのは、50歳までに一度も結婚していない「50歳時未婚率」の上昇だ。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、1985年までは男女とも5%未満だったが、2015年に男性はほぼ4人に1人の23・37%、女性はほぼ7人に1人の14・06%に上った。経済的に不安定な非正規雇用の増加や結婚観の多様化などが影響しているとみられる。
また、総務省統計研究研修所によると、親と同居する未婚者数(20~59歳)は1980年の879万人から、2016年は1392万人に増えている。
宝塚市では16年から2カ月に1回、「宝塚・シングル介護者の会」が開かれている。地元や三田市などに住む50~60代の7人が参加した昨年の集まりでは、それぞれの近況報告に加え、「親に『ちゃんとしてほしい』と思う分、イライラして声を上げてしまう」「ほかの家族会にも行ったが、シングル介護とは悩みが違う」などの声が出た。
参加者の一人で、30代で離婚を経験した宝塚市の女性(63)は、アルツハイマー型認知症の母親(88)が今年2月に施設に入るまで、約6年間、在宅でのシングル介護を続けた。
長年、大阪市内で働いていたものの、介護との両立などに悩み、61歳で退職した。母親は物忘れが顕著といい、「シングル介護は閉ざされた空間で疲れ果ててしまい、誰にも相談できずに自滅する。生やさしいものではない。会合では言いにくい部分も吐き出せ、ともに分かり合える」と話している。
次回は4月19日午後1時から。宝塚市売布東の町、「ほっこり庵」で。
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