いのちをめぐる物語
死生観やみとりへの意識を問う神戸新聞社のアンケートで、自分や家族の死を考えたり話したりすることに心理的抵抗感があるとした人は37%に上った。年代が若くなるにつれて割合は高まり、身近な人の死に立ち会った経験がない人の方が抵抗感は大きかった。国は、高齢者らが終末期医療やケアについて事前に家族らと話し合うよう勧めるが、死を話題とすることへの抵抗感は依然として根強いことがうかがえる。(田中宏樹)
アンケートは、高年(65歳以上)▽中年(40~64歳)▽若年(39歳以下)-に分けて実施。各世代に、死を考えることへの抵抗感が「ある」「どちらかといえばある」「どちらかといえばない」「ない」-の4択で尋ねた。若年では「ある」「どちらかといえばある」が約半数おり、高年でもおよそ3人に1人の31%に上った。
家族など親しい人の死の瞬間に立ち会った経験の有無は、全体の59%が「ある」、41%が「ない」と回答。「ある」人で、死を考えることに抵抗感を持つのは34%だったのに対し、「ない」人は8ポイント高い42%だった。
さらに、高年世代は半数近くの48%が、人生の終わりに向けた「終活」をしていた。内容は持ち物の整理や遺言書作成、葬儀会社の選定など多岐に及んでいる。
若年世代には死について深く考えた経験の有無を問い、68%が「ある」、32%が「ない」と答えた。
国は、人生の最終盤に受けたい医療やケアを事前に家族や医師と話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」を啓発しているが、死を話題にすることへの抵抗感の払拭(ふっしょく)が、浸透に向けた課題の一つとなりそうだ。
豊岡市で看護小規模多機能型居宅介護事業所を運営する「ソーシャルデザインリガレッセ」の大槻恭子代表理事(42)は「いきなり死について話すのは壁があるかもしれない」と指摘。「大切にしていることやこだわりなど、どんな価値観を持って生きているのかを家族らと話すことが、納得できる最期の選択につながるのでは」と話した。
アンケートは10~11月にかけてインターネットなどで実施し、739人が回答した。
2019/12/13いのちの終い方を考える ALS女性患者の嘱託殺人事件2020/9/20
【詳報】ALS患者嘱託殺人への受け止め シャボットあかねさんに聞く2020/9/20
「限られた時間を心豊かに」がん患者団体代表で僧侶の宮本さんが会設立2020/9/7
手を借りれば何でもできる 知ってますか、ALS患者のこと2020/8/23
触れ合えば、個性分かるのに 西村隆さんのコメント全文2020/8/23
望む最期を共有「人生会議」 コロナ禍で高まる重要性2020/8/10
写真と言葉で刻む「生」 国森康弘さんが新著出版2020/4/20
緩和ケア病棟、増加の一途 30年で全国431施設に2020/3/22
伴侶を失った65歳以上の死別者 兵庫に38万人2020/3/5
未婚率上昇で増加 シングル介護の悩み共有する会2020/2/27
家族亡くした喪失感癒やす 遺族会、関西で広がり2020/2/17
終末期の迎え方、医師がヒント 神戸新聞東播支社でセミナー2020/2/11
多様なみとり、写真で紹介 神戸出身のフォトジャーナリスト講演2020/2/3
【アンケート】人生の終章へ、あなたの思いは2019/12/20
【アンケート】自身の死生観に影響した出来事は2019/12/20
「死」を話題4割に抵抗感 みとりの経験が左右2019/12/13
延命治療95%「望まない」 高年齢ほど割合多く2019/12/12
自宅で最期6割希望も「困難」 65歳以上、家族の負担懸念2019/12/11
医療過疎の山上集落へ移住 医師と看護師 兵庫から岡山・美作に2019/12/4
死者の4割、自宅で最期 みとりが「文化」の離島2019/12/2
「散らす人生」始めては 淀川キリスト教病院名誉ホスピス長講演2019/11/16
認知症って隠さなあかんこと? 接客で心元気に2019/10/29
最期までこの家で 死と向き合う家族の姿描く映画2019/10/27
みとり、緩和ケアの課題探るシンポ 神戸で11月2019/10/25
みとり需要、増える在宅支援診療所 兵庫は860超2019/9/22
「孤独死」同居でも増加 引きこもりや家族認知症で発見遅れ2019/8/19
延命意思を事前データ化 QRコードで確認検討2019/8/11
「海に帰る」散骨で別れ 葬送多様化、高まる需要2019/8/9
海岸は禁止 自然に返らないものまかない 海洋散骨で独自指針2019/8/9
人生「最期」見つめるカードゲーム 「もしバナゲーム」活用広がる2019/8/4
医療やケア、地域づくり考える 黒田裕子さんの思い受け継ぎ、7月フォーラム 2019/6/13
人生の最終段階迎えたら 希望の過ごし方、事前に話を2019/6/12
火葬炉、都市部で増強の動き 「多死社会」に備え2019/6/12
「看取りの家」断念 多死社会の課題浮き彫りに2019/6/8
VR映像で思い出の場所へ 終末期緩和ケアに効果2019/6/7
終末期の暮らしを考える 7月から神戸で講座2019/6/6