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いのちをめぐる物語

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足の指でパソコンを操作する西村隆さん=芦屋市内
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足の指でパソコンを操作する西村隆さん=芦屋市内

 37歳で筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した兵庫県芦屋市在住の西村隆さん(60)。取材のために用意していただいた西村さんの文章に、取材時の言葉を加えたコメントは次の通り。

     ◇

 ALSの約7割は人工呼吸器を拒否して、死を選択します。全身まひの命に価値、尊厳を見いだせないのです。それも個人の美意識、死生観です。

 (京都の事件で薬物を投与されて殺害されたとされる)林優里さんの呼吸の数値を見ると、呼吸は良好だと思います。ほかの身体状態は悪いのに医師は死が差し迫ってないと判断します。精神的苦痛は数値にはできません。このギャップは苦しい。

 疲れる前にもっとALS患者を含めて、多様な人とネットワークを結んでいたら、もう少し楽に生きられたと思います。私の場合、患者会は力になりました。患者を紹介されて、将来の姿を見せてもらった。生きられる、と感じました。

 急性期の連続する喪失(歩けない、食べられない、話せない)体験は、まさに自尊心が崩壊する苦しみです。その苦しみはよく分かります。

 でも、小さな楽しみもあります。ネコやヘルパーとの交流などがあります。病気と付き合う中で、気持ちを明るくする術を身につけます。想像力です。気持ちを病気から引っぺがす。ごまかすことは大切です。想像力がマイナスにしか向かわないとしたら、悲劇です。

 私は23年間、想像(妄想)力を鍛えてきました。私はALSということを意識せずに生活します。動けないことも良しとする。

 昔の社会は、今より不便で不自由です。でも、幸福だったかもしれません。それと同じで、もし僕が健康だとしても、今より幸福かどうかは「?」です。

 私の家族も苦しみましたが、絶望はしなかった。毎日、転んだり、失禁したりする私をおいて仕事をする妻の期待、必死さに、私は応えていました。今もそうかもしれません。家族に迷惑をかけない、という消極的な意味ではなくて自立、自律です。

 家族みんなが僕を中心に生活したら、重荷になります。みんなが生き生きと自由にしているからこそ、幸福です。

 多様な生き方、病気を含めて寛容で、関心を持ってほしい。少しでも触れ合えば、個性が分かるのに。

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2020/8/23
 

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