いのちをめぐる物語
大切な人を亡くした人同士が出会い、喪失体験や気持ちを分かち合う「遺族会」の活動が関西で活発化している。国内で唯一という連絡組織「関西遺族会ネットワーク」には、兵庫の11団体を含む計40団体が登録。それぞれの遺族会を検索できるホームページも好評だ。同ネットの代表を務める黒川雅代子(かよこ)さん(54)によると、関西での動きの背景には阪神・淡路大震災(1995年)や尼崎JR脱線事故(2005年)の経験もあるという。(中島摩子)
同ネットは11年に計19団体で設立された。年に2回会合を開き、情報交換をしたり、専門家を招いて「グリーフ(悲嘆)ケア」について学んだりする。
ホームページは15年に開設され、亡くなった相手▽自死や病気、事故などの死亡理由▽開催地域-などの情報を入力すれば、自分に合った遺族会を検索できる。活動は、尼崎JR脱線事故を機に設立された「JR西日本あんしん社会財団」が助成している。
代表の黒川さんは龍谷大短期大学部教授で、神戸での遺族会立ち上げなどに関わった。「核家族化が進んで家族葬が増え、葬式に参列することも少ない。『周りに死別を経験した人が誰もいない』という声も聞く」と黒川さん。ただ「必ずしもそうではなく、死や遺族が見えにくくなっている面もある。だからこそ遺族会が必要」と話す。
さらにその意義について「同じ経験をし『少し先を歩んでいる人』に出会うことで、これからどう生きるのかを考えられるようになる」と強調する。
それぞれの遺族会では、定期的に集まって悩みを打ち明けるなどする。運営には、一方的なアドバイスや批判はしない-といったルールもある。関西で遺族会が増えている背景として黒川さんは、阪神・淡路などの経験に加え、脱線事故後に開設された「上智大学グリーフケア研究所」(大阪市北区など)の修了生による熱心な活動も挙げる。
脱線事故で当時18歳だった大学1年の娘を亡くした母親(65)=兵庫県宝塚市=は、グリーフケア研究所で学んだ後、四つの遺族会に関わる。「何年たっても亡くなった人のことを話したいのに、周囲に『いつまで言っているの?』と言われると、だんだんと話せなくなる」とし、「遺族会では皆が同じと思え、孤立感が癒える。悲しみが分かる社会になってほしい。そのための遺族会だと思う」と話している。
同ネット(http://izoku‐net.com/)
2020/2/17いのちの終い方を考える ALS女性患者の嘱託殺人事件2020/9/20
【詳報】ALS患者嘱託殺人への受け止め シャボットあかねさんに聞く2020/9/20
「限られた時間を心豊かに」がん患者団体代表で僧侶の宮本さんが会設立2020/9/7
手を借りれば何でもできる 知ってますか、ALS患者のこと2020/8/23
触れ合えば、個性分かるのに 西村隆さんのコメント全文2020/8/23
望む最期を共有「人生会議」 コロナ禍で高まる重要性2020/8/10
写真と言葉で刻む「生」 国森康弘さんが新著出版2020/4/20
緩和ケア病棟、増加の一途 30年で全国431施設に2020/3/22
伴侶を失った65歳以上の死別者 兵庫に38万人2020/3/5
未婚率上昇で増加 シングル介護の悩み共有する会2020/2/27
家族亡くした喪失感癒やす 遺族会、関西で広がり2020/2/17
終末期の迎え方、医師がヒント 神戸新聞東播支社でセミナー2020/2/11
多様なみとり、写真で紹介 神戸出身のフォトジャーナリスト講演2020/2/3
【アンケート】人生の終章へ、あなたの思いは2019/12/20
【アンケート】自身の死生観に影響した出来事は2019/12/20
「死」を話題4割に抵抗感 みとりの経験が左右2019/12/13
延命治療95%「望まない」 高年齢ほど割合多く2019/12/12
自宅で最期6割希望も「困難」 65歳以上、家族の負担懸念2019/12/11
医療過疎の山上集落へ移住 医師と看護師 兵庫から岡山・美作に2019/12/4
死者の4割、自宅で最期 みとりが「文化」の離島2019/12/2
「散らす人生」始めては 淀川キリスト教病院名誉ホスピス長講演2019/11/16
認知症って隠さなあかんこと? 接客で心元気に2019/10/29
最期までこの家で 死と向き合う家族の姿描く映画2019/10/27
みとり、緩和ケアの課題探るシンポ 神戸で11月2019/10/25
みとり需要、増える在宅支援診療所 兵庫は860超2019/9/22
「孤独死」同居でも増加 引きこもりや家族認知症で発見遅れ2019/8/19
延命意思を事前データ化 QRコードで確認検討2019/8/11
「海に帰る」散骨で別れ 葬送多様化、高まる需要2019/8/9
海岸は禁止 自然に返らないものまかない 海洋散骨で独自指針2019/8/9
人生「最期」見つめるカードゲーム 「もしバナゲーム」活用広がる2019/8/4
医療やケア、地域づくり考える 黒田裕子さんの思い受け継ぎ、7月フォーラム 2019/6/13
人生の最終段階迎えたら 希望の過ごし方、事前に話を2019/6/12
火葬炉、都市部で増強の動き 「多死社会」に備え2019/6/12
「看取りの家」断念 多死社会の課題浮き彫りに2019/6/8
VR映像で思い出の場所へ 終末期緩和ケアに効果2019/6/7
終末期の暮らしを考える 7月から神戸で講座2019/6/6