時には、人を喜ばせるために取った行動が裏目に出て、迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。イラストレーターの斉藤知子さんによる『雨の日のお手伝い』は、白い布を被ったような見た目のオバケちゃんと1羽のガチョウが、率先して家事を手伝う様子を描いた作品です。以前X(旧Twitter)に投稿されると、2000を超える「いいね」が寄せられています。
■率先して洗濯物を取り込もうとしたものの…
一緒に暮らしている家主の女の子が出かけるため、少しの間、お留守番をすることになったオバケちゃんとガァ。すると、間もなくして雨が降ってきます。ベランダには雨にさらされている洗濯物がありました。
洗濯物を取り込もうと思ったオバケちゃんは合羽をまとい、ガァは頭に手ぬぐいを巻きます。そして、踏み台と洗濯カゴを持って外に行き、洗濯物の回収を開始。しかし、オバケちゃんがシーツを取り込もうとした際、足を滑らせて派手に転倒してしまいます。
何とかガァが介抱し、室内に戻ったオバケちゃん。すると、家主が戻ってきて、全身が濡れたオバケちゃんを見て驚きます。一方で、お手伝いをやり遂げることができずに涙を流してしまうオバケちゃん。それでも家主はオバケちゃんの気持ちを理解し、「お手伝いしてくれてありがとう」とオバケちゃんの手を取り、さらに「とっても嬉しいよ」「汚れたものは もう一度洗っちゃおう!」と勇気づけてくれます。
オバケちゃんにケガがないことを確認した後、家主は温かいお茶を入れます。家主とオバケちゃん、ガァで一息ついていると、洗濯機から洗濯完了を知らせる音が。家主はオバケちゃんに「干すのお手伝いしてくれる?」と尋ねると、オバケちゃんは嬉しそうに「ん!!」と片手を上げて引き受けるのでした。
読者からは「オバケちゃんのリアクションが堪らなく可愛い」「心が温まる素敵な話」などの反響が。そこで作者の斉藤さんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。
■子どもの頃の切ない記憶が元ネタ?
-「オバケちゃん」シリーズを描き始めたきっかけを教えてください。
オバケちゃんは、元々オバケのモチーフが好きで一枚絵のシリーズで描いていたのですが、知人に漫画で描いてみても良いのではないかと言われたことがきっかけで描き始めました。
-同作の中で、特にお気に入りの場面があれば、理由と一緒にぜひお聞かせください。
お手伝いが成功し女の子に喜んでもらえる想像をするオバケちゃんとガァ、そして、それが失敗に終わった際のオバケちゃんのトボトボとした後ろ姿です。私が子どもの頃、これは喜んでもらえる!と思ったのにうまくできなかった時の切なさを描きたかったお話だったので、象徴的なこのシーンが特にお気に入りの場面となっています。
-オバケちゃんとガアの様子がとても微笑ましく思いましたが、物語を構成するうえで意識しているポイントをぜひ教えてください。
オバケちゃんやガァが悲しい気持ちのまま物語が終わってしまわないように意識しています。悲しいこと、切ないことの中にもホッとできる一言やキャラクター同士のやり取りを入れるように構成しています。
-読者にメッセージをお願いいたします。
オバケちゃんやガァ、そして家主の女の子の、楽しく、時々ちょっぴり切ない日々をこれからも描いていきますので、ぜひご覧いただけましたら幸いです。
(海川 まこと/漫画収集家)